2011年12月10日

NAFTAから見る日本のTPP

「TPPにわか勉強歴」がわずか1年余りのオジサンにとって、TPPがまだTPPでなかった頃、「P3−CEP」と呼ばれていたとは知らなかった。
 
Pacific Three Closer Economic Partnership
別名:P3-CEP、太平洋3カ国間経済緊密化パートナーシップ
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の前身となったパートナーシップの名称。敢えて日本語に翻訳するならば「太平洋3カ国間経済緊密化パートナーシップ」といった意味合いの表現。
2002年10月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議において、ニュージーランド、シンガポール、およびチリの3ヵ国が「Pacific Three Closer Economic Partnership」として経済協力構想の交渉を開始し、その後も、政府間の交渉を継続的に実施。最終段階でブルネイも交渉に加わった末に、2006年に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)として4ヵ国間で発効した。
 
この3国はGDP値から見ても小国であり、その周辺には大国が存在する。
 
たとえば、ニュージーランドにはオーストラリア、シンガポールにはマレーシア、チリにはアルゼンチンとブラジルの存在が大きい。 
この小国連合構想が、TPPとなってその後の大国に乗っ取られたのか、それとも、小国たちの誘い水に大国たちが乗せられたのか、まだ結論は先のようである。
 
このような連合構想が生まれる迄は2国間自由貿易協定(FTA)が主流だった。
 
そして3カ国以上での多国間自由貿易協定で歴史のあるものに17年前に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)があり、これはアメリカ合衆国、カナダ、メキシコの3国で結ばれた自由貿易協定である。
 
この協定の構成をみるとまさにTPPと瓜二つである。
 
この自由貿易協定によって、まずカナダはどんなダメージを受けたのか、下記の動画を見て欲しい。
アップ時期が今年の1月末ですが、カナダ農業は実態は5分過ぎころからです。
 
  
   
次に、メキシコについて調べているうちに、東京生まれの沖縄在住で、現在、日本初の農業の弁護士兼伝道師を修行中の人のブログでNAFTAによりメキシコに与えられた影響に関しての記事に出会った。
 
NAFTAはメキシコに巨大な影響を与えました。当初、このFTAにおいてメキシコが得るものが大きいと思われてきました。米国市場への労働力移動、トマトなどの安価な農産物輸出などは、疲弊していたメキシコ経済の救いの手とすら思われていたのです。
現実に、NAFTAはメキシコになにをもたらしたのでしょうか。それにはメキシコ人の食の中心であるトウモロコシを見ればわかってきます。
NAFTA以降のメキシコのトウモロコシを語る上で、問題点はふたつあります。
ひとつは、NAFTAによりメキシコのいわば命の食とでもいうべきトウモロコシの輸入量がどのように変化したのか、です。
メキシコ人にとってトウモロコシはありとあらぬる食に登場するソールフードです。粉にしてのトルテーア、スープに゛そして菓子にと、ありとあらぬるものに変化してメキシコ人の食を支えています。
それはマヤ文明から続く連綿とした食の歴史であり、伝統でした。それがどのように変化したのかを見ます。
そしてもう一点は、質の問題として、遺伝子組み替え・GMトウモロコシの侵入がどのていどなされてたのかです。このGM種に注目するのは、GM種が他の通常の品種と異なり、種子と農薬があらかじめワンセットになっているからです。
トウモロコシにたかるシンクイムシを殺すために、あらかじめ植物細胞内に殺虫成分を遺伝子組み替えで組み込んでしまいます。
これが害虫耐性ですが、これに耐性ができた害虫が生まれ、そうして更に強力な害虫耐性をもつ品種を作り・・・というお定まりの悪循環の中で、強力な農薬耐性をもった害虫が野に放たれました。これが予想もしなかった恐るべき生態系攪乱を引き起こします。
また、作物はなんともないのに雑草だけを枯らす、というのが謳い文句の除草剤耐性を持つGM種も作られました。これは、なんとこのGM種には同じモンサント社の除草剤にしか効かないというスグレモノでした。
農家はいったんGM種を導入すれば、ほぼ永遠にモンサントからGM種の種と除草剤を使い続けねばならなくなります。まるで麻薬中毒のようですが、これがモンサント社の目的だったのです。
元来農薬会社だったモンサント社が、いくつかの米国の種子会社を吸収していったのは、将来においてGM種子と農薬をセットで販売することによって、世界市場を種と農薬で一元支配することにありました。
やや誇大妄想が入っているように聞こえるかもしれませんが、事実、そのように進行しています。
モンサント社が米国市場を席巻しながら、次の標的と決めたのが隣国のメキシコでした。そして今、モンサント社の大きな障害は、頑固なブロック経済を築いて守りをかためるEUとわが日本だけとなったのでした。
ちなみに、米国の「TPP推進のための米国企業連合」の農業部門のメンツは次の通りです。顔ぶれだけで、米国の戦略がスケスケですね。
・カーギル、モンサント、アメリカ大豆協会、トウモロコシ精製協会、全米豚肉生産者協議会
このような連中は、わが国内部の「思惑がある連中」と結びついてTPPで大儲けをしたいと考えています。それが先に明らかになったモンサント社と住友化成との「長期的協力関係」です。これが明らかに近い将来のTPPを見据えていることは言うまでもありません。
この「わが国内部の思惑がある連中」の筆頭が、住友化成の社長にしてTPP推進総司令部の経団連会長・米倉弘昌氏です。あまりの分かりやすさに失笑してしまうほどです。
さて、メキシカンのソールフードはどのような運命を辿ったでしょうか?
では、まずNAFTAによる米国産トウモロコシの輸入量をみてみましょう。アメリカからの輸入トウモロコシは、1991年締結時が131万トンであったものが、2005年には580万トンと4..4倍に膨れ上がりました。
なんだそんなていどかと、ふっと読み過ごしてしまうかも知れませんが、トウモロコシは実はメキシコ政府が国民の食の基本だとして重要品目(「センシティブ農産物」と呼びます)に特別に指定して保護してあるものなのです。
ですからNAFTAにおいても、1991年から2008年1月1日まで最長スパンで保護関税が認められていました。
本来、FTAにあっては「例外なしの関税撤廃」が原則です。ですから、当該政府がこれだけは待ってくれ、という品目(センシティブ農産物)を巡っては熾烈な交渉となります。日本ではさしずめコメを中心にして、牛肉、豚肉、乳製品あたりとなるでしょう。
メキシコ政府はとうぜん国民の主食の地位にあるトウモロコシに対して、高関税をかけてブロックしようとしました。ただし、先ほども言いましたが、条約で認められた最長幅である15年間に限ってですが。
ちなみに私は日米FTAが締結されてしまった場合、15年間ていどしか国産のコメを防衛できないと考えています。それはNAFTAの前例が有効だからです。
それはさておき、メキシコの現実はどうであったでしょうか。欄外図にその内実が無残に現れています。表の中心を斜め右上に伸びているのが、輸入制限枠です。毎年少しずつ輸入枠が増加する取り決めでしたが、現実には、斜め斜線で塗られた部分が輸入超過分です。
ところが、米国はまったく輸入枠制限を遵守しませんでした。平然と輸入制限枠を超えて輸出を増加し続けたのです。そのために本来はこれに賭けられるはずのメキシコの関税損失分は、12年間で実に33.6億ドルに達すると試算されています。
このようにしてメキシコは、本来の移行期間においてすら主食のトウモロコシを防衛できませんでした。そのために、マヤにオリジンがあるトウモロコシは、今や米国のトウモロコシ輸出第2位の輸入国に転落してしまったのです。
そして、1991年のNAFTA締結前には100%の自給率を誇っていたメキシコ国産トウモロコシは、2005年には既に67%にまで落ち込んでしまっていたのです。
自分の国の主食も守れんし、米国から関税も取れないなんて、メキシコ政府、なんたることだ、と思うのは私だけでしょうか。
このようにTPPは、いったん締結に持ち込まれてしまい、巨大な既得権益を与えてしまえば、煮て食おうと焼いて食おうとその国の首根っこを握った国の言うがままになるのです。それがメキシコとNAFTAの教訓でした。
私はNAFTAに日本の近未来を見ます。
 
もう、多くを語る必要はあるまい。
 
日本がTPPに参加して米国主導のルールに従うことによって、上記の文中の「トウモロコシ」を「日本のコメ」に置き換えて読めば、おのずと日本の未来は明らかになってくるのではないか、とオジサンは思う。
posted by 定年オジサン at 11:00| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする