2015年02月10日

テロに屈しない安倍政権のために国民は自粛するのか

「イスラム国」による日本人人質事件を巡る政府の対応が「適切だった」と思う人は55%で、「そうは思わない」の32%を上回り、イスラム国対策として中東諸国への人道支援をさらに拡充するという安倍晋三首相の方針についても「賛成」が63%で、「反対」は26%にとどまった。人質事件への対応が評価されたことが、内閣支持率を押し上げたとみられる。
 
この結果は「内閣支持上昇58%、人質対応を評価…読売調査」という讀賣新聞の世論調査結果。
 
この内容はロイター通信も報道しており、それを読んだ米国のネットユーザーから以下のようなコメントがあった。
 
「9.11の時のアメリカのように、首相の支持率が上がるようにお膳立てされたのだろう」
「にせの世論調査結果じゃないのか」
「2人の人質を救出できなかったのに、どうして支持率が上がるんだ?」
「安倍首相はこの悲劇を引き起こして、支持率が上がったって?日本でしか起こらない奇跡だ」

 
この讀賣新聞の世論調査には、あえて「自己責任論」を喚起するような罠が仕掛けられていた。 
 
<危険地域のテロ被害「責任は本人にある」83%>
 読売新聞 2月7日(土)22時9分配信
 読売新聞社の全国世論調査で、政府が渡航しないように注意を呼びかけている海外の危険な地域に行って、テロや事件に巻き込まれた場合、「最終的な責任は本人にある」とする意見についてどう思うかを聞いたところ、「その通りだ」が83%に上り、「そうは思わない」の11%を大きく上回った。
 「その通りだ」とした人は、イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件を巡る政府の対応を「適切だ」とした人の90%に達し、適切だとは思わない人でも73%を占めた。支持政党別にみても、自民支持層の88%、民主支持層の81%、無党派層の79%が「その通りだ」としており、「最終的には自己責任」の考え方が、広く浸透している。
 一方、海外で日本人がテロの標的となる可能性が「高まった」と思う人は81%を占め、「そうは思わない」は14%だった。
 
この世論調査に誘導されたことにより、海外で日本人がテロの標的となる可能性が「高まった」と思う人が81%にも上ったことが、さっそく具体的な動きとなってスポーツ界にも広がってきた。 
 
<テロ標的に?「JAPAN」ジャージー使うな>
 2015年02月09日 22時24分 讀賣新聞
 イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件を受け、スポーツ界では、中東などで開催される国際大会への選手派遣を見合わせる動きが広がっている。
 日本オリンピック委員会(JOC)では「現時点では(出場の判断は)各競技団体に委ねている」と静観しているが、安全面の不安などから、自主的に派遣中止を検討する団体も相次いでいる。
 読売新聞社が各競技団体に問い合わせたところ、少なくとも6団体が派遣中止を決定、もしくは検討している。既にクウェート、カタールで開催される国際大会への遠征中止を発表した日本卓球協会のほか、日本レスリング協会でも、強豪国であるイランへの遠征を取りやめた。
 日本フェンシング協会でも、今月下旬からアラブ首長国連邦(UAE)で開催される若手のアジア選手権への派遣について、派遣中止を含めた議論を始めた。豊田友彦事務局長は「外務省と情報を共有しながら協議している。安全を担保できるかがポイントだ」と説明した。近代五種も3月にエジプト・カイロで行われる大会に出場させるかどうかを検討している。
 日本人を標的としたテロなど不測の事態を避けるため、既に海外へ出発した選手たちにも、注意を促している。フェンシング協会では、海外遠征している選手らに対し、日本選手団の服装で、むやみに外出することを控えるように求めた。全日本柔道連盟でも、欧州に遠征する選手やスタッフらに対し、日の丸や「JAPAN」の文字が入ったジャージーやバッグなどの使用を控えるよう通達する。
 
1月20日、イスラエルで日の丸とダビデの星のイスラエル国旗の前で行った安倍晋三首相の演説。
 
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イスラム教を全ての価値観の基盤とする中東諸国では、この演説の態勢がイスラエル国旗を背景にするというものであったことにより必然的に日本国に対する印象は悪化してしまった。
 
有志連合を率いる米国を後ろ盾とするイスラエルの国旗を背景としてイスラム国と戦う姿勢を強調したことにより、日本国がどれだけ世界情勢に対する認識が粗雑なのかが世界全体に認識させてしまった張本人は言うまでもないが安倍晋三であり、スポーツ界もとんだとばっちりを受けたことになる。  
 
さらに「米主導の有志連合は『憂死連合』となる」でも紹介したが、「旅券の強制返納事件」。
 
明らかな報道・移動の自由は最大限尊重する憲法違反なのだが、旅券法を優先する方針を改めて明言していた。 
 
<シリア渡航予定・旅券返納命令:保護規定を初適用 政府、人質事件で方針転換>
 毎日新聞 2015年02月10日 東京朝刊
 シリア渡航を計画していた新潟市のフリーカメラマン、杉本祐一さん(58)が外務省から旅券の返納命令を受けた問題で、菅義偉官房長官は9日の記者会見で、シリア全土に渡航延期・退避勧告を出していることなどを理由に、今後も同様のケースで旅券返納を求める方針を明言した。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による日本人人質事件に危機感を高める政府は、説得に応じない人に旅券法の邦人保護規定を初適用して強行策に踏み切った。ただ、憲法の「渡航の自由」に絡むだけに、邦人保護を巡る議論は尾を引きそうだ。【鈴木美穂、木下訓明、堀祐馬】
 菅氏は会見で、ISの活動地域について「日本人2人が拘束、殺害されており極めて危険」と指摘し、▽ISが日本人殺害を継続すると宣言した▽杉本さんが出国後、シリアに渡航しない保証がない??と命令の理由を説明した。杉本さんは「ISの支配地域には入らない」としていたが、菅氏は支配地域の境界は流動的だとし、シリア全土で拘束や生命の危険が「極めて高い」と述べた。
 旅券法19条1項4号は、旅券所有者の「生命・身体・財産の保護」を理由に、政府が旅券の返納命令を出せると定めている。政府関係者によると、1951年の法施行当時は海外へ渡る日本人が少なく、現地で金銭的に困ったり、心神耗弱に陥ったりした人を「強制帰国」させる事態を想定。日本からの出国を止める趣旨ではなかったという。
 実際、政府は「憲法上、渡航中止を強制するのは困難」とみて、過去に危険地域に渡航しようとする人には任意で中止を要請するにとどめてきた。外務省は昨年、後藤健二さんにもシリア渡航中止を3回促したが、旅券返納は求めていない。同省関係者は「2人の殺害で全く新たな状況が生じた」と方針転換を認めた。
 政府は返納命令の際に過去の判例も検討した。旧ソ連での国際会議に出席しようとした元社会党衆院議員の帆足計(ほあしけい)氏の旅券発給に政府が応じず、帆足氏らが損害賠償訴訟を起こした「帆足計事件」で、58年9月の最高裁判決は、海外渡航も「公共の福祉のために合理的な制限に服する」として、政府判断の違法性を認めなかった。この判決も踏まえ、政府は今回の命令が訴訟に耐えうると判断しているが、判決を巡っては学会などに異論もある。
 杉本さんは4日付の地元紙で渡航を表明。新潟県警と同省が中止を求めたが翻意せず、菅氏の指示で同省は7日に旅券返納命令を出した。杉本さんは毎日新聞の取材に、旅券の返還を求める考えを明らかにし、「返してもらえなければ裁判も検討したい」としている。
 菅氏は「憲法が保障する報道・移動の自由は最大限尊重する」とし、同省幹部は「シリアは例外だ。他の地域への適用は考えていない」と説明する。ただ、渡航が事前に表面化せず、第三国経由でシリアに入国する人を政府が把握するのは「難しい」(菅氏)のが現状だ。
 ◇強制手段、慎重に 報道の自由、侵害
 国民の安全確保のための旅券返納命令と、取材の自由の兼ね合いをどう考えるべきか。元共同通信記者の春名幹男・早稲田大客員教授(国際ジャーナリズム)は「状況が分からないので評価が難しい」としつつ「政府は強制的な手段を取ることに慎重であってもらいたい。少なくとも今回、例外的に旅券を返納させた理由を可能な限り明らかにすべきだ」と指摘する。
 一方で山田健太・専修大教授(言論法、憲法)は「行くべきか、行くべきでないかは報道機関、ジャーナリストが自ら判断すべきだ。旅券返納命令は憲法が保障する移動の自由、報道の自由を侵害しかねない」と外務省の判断を批判する。政府による「危険」との情報は、判断材料に過ぎないといい「危険だからとの理由で渡航を強制的に止めてしまえば、戦争当事国からの一方的な情報しか流れない状態になる恐れもある」と語った。
 
国内のジャーナリストは特定秘密保護法により政府が秘密にしている情報には近寄れなくなった。
 
それによって国民の国家機密に対する「目と耳」を奪ってしまった。
 
さらに今回の旅券返納という強制的な措置が「公共の福祉のために合理的な制限に服する」という1958年9月の最高裁判決に倣うということには無理がある。  
 
現行憲法が「GHQ押し付け憲法」と言って憚らない安倍政権では、もはや憲法は「国家権力を縛るもの」ということを忘れ去ろうとしているようである。 
 
大手マスメディア(新聞・テレビ)がすっかり政権批判をしなくなった最近の風潮に危機感を覚えた人たちが立ち上がった。
 
<「政権批判の自粛、社会に広がっている」1200人声明>
 2015年2月9日23時43分 朝日新聞DIGITAL
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報道などの自粛や萎縮に抗する声明の会見では、賛同者の元経済産業官僚の古賀茂明さん(中央)らが参加した=東京都千代田区
 「イスラム国」人質事件後、政権批判の自粛が社会に広がっている――。フリージャーナリストや学者らが9日、会見を開き、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」を発表した。インターネットなどを通じ、映画監督森達也さん、社会学者の宮台真司さん、作家平野啓一郎さんや中島岳志さんら表現に携わる1200人が賛同し、NHKのディレクターや新聞記者も名を連ねた。
 「政府が主権者やメディアに監視、検証され、批判されることは当然のこと。批判を控えることは戦前の翼賛体制につながりかねない」。そう指摘するのはジャーナリストの今井一さん。今月2〜4日、衆・参院予算委の人質事件に関する野党議員の質疑とNHK・民放のニュース番組の放送時間を検証。2日は4分以上報じる民放がある一方、多くが1分以内。約20秒の番組もあった。「メディアは『自粛』しているという自覚がない。非常に危険だ」
 元経済産業官僚の古賀茂明さんは「いまは相当危機的な状況に至っている」。1月下旬、コメンテーターとして出演するテレビ朝日の番組で人質事件に絡み「アイ・アム・ノット・アベ」と話したところ、ネット上で「政権批判をするな」などの非難が殺到。神奈川県警から自宅周辺の警備強化を打診されたという。声明では、「物言えぬ空気」が70年前の戦争による破滅へ向かった、と指摘している。
 昨年暮れの衆院選前に政権与党が報道各社に「公正な報道」を要請したことにからみ、古賀さんは当時、「報道の自由が失われるまでに3ステップある」とし、「ホップ」で報道抑圧、「ステップ」で報道機関の体制への迎合(自粛)、「ジャンプ」で選挙による独裁政権の誕生、と指摘した。古賀さんは「報道の自粛が蔓延(まんえん)し、国民に正しい情報が行き渡らなくなりつつあるのではないか」と警鐘を鳴らした。(斉藤佑介)
 
声明文の全文は以下の通り。 
 
翼賛体制の構築に抗する
言論人、報道人、表現者の声明

 私たちは「ISIL」による卑劣極まりない邦人人質惨殺事件を強く非難し、抗議するものである。また、この憎しみと暴力の連鎖の帰結として起きた事件が、さらなる憎しみや暴力の引き金となることを恐れている。
 同時に、事件発生以来、現政権の施策・行動を批判することを自粛する空気が日本社会やマスメディア、国会議員までをも支配しつつあることに、重大な危惧を憶えざるを得ない。
 「このような非常時には国民一丸となって政権を支えるべき」
 「人命尊重を第一に考えるなら、政権の足を引っ張るような行為はしてはならない」
 「いま政権を批判すれば、テロリストを利するだけ」
 そのような理屈で、政権批判を非難する声も聞こえる。
 だが、こうした理屈には重大な問題が潜んでいる。
 まず、実際の日本政府の行動や施策が、必ずしも人質の解放に寄与するものとは限らず、人質の命を危うくすることすらあり得るということだ。であるならば、政府の行動や施策は、主権者や国会議員(立法府)やマスメディアによって常に監視・精査・検証され、批判されるべき事があれば批判されるのは当然の事であろう。
 また、「非常時」であることを理由に政権批判を自粛すべきだという理屈を認めてしまうなら、原発事故や大震災などを含めあらゆる「非常時」に政権批判をすることができなくなってしまう。たとえば、日本が他国と交戦状態に入ったときなどにも、「今、政権を批判すれば、敵を利するだけ」「非常時には国民一丸となって政権を支えるべき」という理屈を認めざるを得なくなり、結果的に「翼賛体制」の構築に寄与せざるを得なくなるだろう。
 しかし、そうなってしまっては、他国を侵略し日本を焼け野原にした戦時体制とまったく同じではないか? 70数年前もこうして「物言えぬ空気」が作られ、私たちの国は破滅へ向かったのではなかったか? 
実際、テレビで政権批判をすると、発言者や局に対してネットなどを通じて「糾弾」の動きが起こり、現場の人々に圧力がかかっている。
 問題なのは、政権批判を自粛ないし非難する人々に、自らがすでに「翼賛体制」の一部になりつつあるとの自覚が薄いようにみえることである。彼らは自らの行動を「常識的」で「大人」の対応だと信じているようだが、本当にそうであろうか?私たちは、今こそ想像力を働かせ、歴史を振り返り、過去と未来に照らし合わせて自らの行動を検証し直す必要があるのではないだろうか?
 日本国憲法第21条には、次のように記されている。
 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」
 日本国憲法第12条には、次のようにも記されている。
 「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」
 私たちは、この日本国憲法の精神を支持し尊重する。そしてこの精神は、「非常時」であるときにこそ、手厚く守られ尊重されなければならないと考えている。
 なぜなら「非常時」にこそ、問題の解決のためには、様々な発想や見方、考え方が必要とされるからである。
 私たち言論・表現活動に携わる者は、政権批判の「自粛」という悪しき流れに身をゆだねず、この流れを堰き止めようと考える。誰が、どの党が政権を担おうと、自身の良心にのみ従い、批判すべきだと感じ、考えることがあれば、今後も、臆さずに書き、話し、描くことを宣言する。
                        2015年2月9日
 
「いま政権を批判すれば、テロリストを利するだけ」
「このような非常時には国民一丸となって政権を支えるべき」
 
こんな身勝手な屁理屈には、こんな風に対抗すべきであろう、とオジサンは思う。
 
いま政権を批判しなければ、今後もますます人質は見殺しにされる!
 
このような安倍政権の横暴と暴走には、国民一丸となって政権批判を続けなければならない」 

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2015年02月09日

冷静に、かつ厳しい海外メディアの安倍晋三評価

昨日は「米主導の有志連合は『憂死連合』となる」の中で、「いつから『有志連合』入り? まともに答えられない安倍政権」という記事を引用したが、米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める戦争平和社会学者の北村淳が「イスラム国と戦う『有志連合』、まぎれもなく日本は一員である」という記事の中で、こうのように解説していた。
  
そもそも、アメリカ政府の定義によると日本は「人道支援を提供する同盟国」と見なされていたという。
 
ちなみに2014年9月時点でアメリカ政府が有志連合としたのは、
「何らかの軍事支援を提供する同盟国」が20カ国、
「軍事支援ではなく人道支援を提供している同盟国」が13カ国、
「いまだに軍事支援も人道支援も提供していないが支援を表明している同盟国」13カ国、
「特定の支援は表明していないがアメリカ政府は同盟国と見なしている諸国」が13カ国、
それにアメリカ自身を加えた60カ国であった。
 
その詳細は区分けによって若干国の数が合わないところもあるが、おおよそこんな感じである。
 
■軍事支援と人道支援を実施する有志連合:17カ国
 アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、イタリア、デンマーク、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エストニア、ハンガリー、チェコ、ブルガリア
◆軍事支援だけを実施する有志連合:4カ国
 ヨルダン、バーレーン、アルバニア、クロアチア
□人道支援だけを実施する有志連合:14カ国
 日本(シリアとイラク領内の難民に対しておよそ2550万ドルの人道支援)、韓国、クウェート、トルコ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スペイン、アイルランド、スイス、オーストリア、ルクセンブルグ、スロバキア、グルジア
 
そして現時点での有志連合軍事作戦は、以下のように大別されるらしい。
(1)シリア領内のIS支配地域に対する空爆
(2)イラク領内の支配地域に対する空爆
(3)IS軍と地上で戦闘を交える自由シリア軍、イラク政府軍、それにクルド族部隊に対する補給活動
(4)自由シリア軍、イラク政府軍、クルド族部隊に対する軍事顧問団による教育訓練
 
したがって日本が行っている人道支援は軍事作戦の一部ではないのだが、2月1日に公表された後藤健二さんの殺害動画を見て、「テロリストに罪を償わせる」と表明した安部首相が「人道支援」よりステップアップする場合、理論的には以下のことを行っていくことになると指摘している。
 
「人道支援プラス軍事支援(武器弾薬の提供)」
「人道支援プラス軍事作戦での補給活動」
人道支援プラス軍事作戦での戦闘活動
 
しかしながら、菅官房長官は「有志連合に対して資金援助や後方支援は行わない」と明言したが、一部ネトウヨは困惑し非難轟々であった。
 
上記のように、人道支援を実施してきた日本は有志連合の一員なのである。ただし防衛関係法令や軍事的能力の制約により有志連合による軍事作戦には参加しておらず、軍事支援も実施していないだけなのである。
 
ということは、日本政府やメディアは「日本は有志連合の空爆などの軍事作戦にはいかなる形でも参加しないし、兵器弾薬の供給をはじめとする軍事援助も実施しない」と表現しなければならない。そうでなければ、人道支援を通してISとの戦いに貢献している日本が、あたかもいまだに有志連合に参加していないとの誤解を招くことになってしまうと指摘する。
 
そして結びとして、人道支援を実施する日本は、有志連合の軍事作戦には参加していないが、アメリカはじめ有志連合諸国そしてISからも、名実ともに有志連合の一員と見なされていることを、日本政府はじめ我々日本国民はしっかり認識しておかねばならない、と警告していた。   
 
すでに日本も一員とみなされている有志連合の国のメディアは日本国内の翼賛メディアとは少々異なる安倍晋三評価を痛烈にしていた。
 
<後藤氏殺害は安倍総理のミスか。白熱する欧米の報道>
 2015/2/6 Weekly Briefing(ワールド編)
 ジャーナリスト後藤健二氏がイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の手により斬首されたショックを受け、多くの世界のメディアは安倍総理の外交手腕、交渉力を疑問視し始めている。たとえば、イタリアのメディアは、「後藤さん殺害、すべてのエラーは安倍総理のせい」と報道。そのエラーを7つに分けて解説した。一方、ドイツのメディアは安倍外交に無関心。その対比も面白いが、海外メディアのストレートな物言いは日本のメディアではお目にかかれそうもない。
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Japanese PM Shinzo Abe after hearing news of the execution of Jordanian pilot Lt. Muath Al-Kaseasbeh. ーREUTERS/Aflo/Toru Hanai
英国は「日本は自立しろ」と批判 
英国は、「ジハーディ(聖戦士)・ジョン(ISILの処刑人)」の出身地だ。英国の大手メディア、BBCやPearsonなどは、ISILとの人質解放交渉において実績のあるトルコではなく、実績のないヨルダンに交渉を頼ったのはなぜかと酷評した。
また、日本国内で、安倍外交の評価について議論がされている点を指摘するとともに、安倍政権は他国に頼らず、外交において自立すべきと示唆した。
また、Financial TimesのDavid Pilling記者は今までの日本外交政策についてこう解釈した。
「大ざっぱに言うと、日本は、自国の経済的利益を追求するとともに、すべてすべての国の友達を演じている。その一方、国防という厄介な仕事についてはアメリカにアウトソースしている」
アメリカは、人質情報を知りながら中東訪問したことを疑問視 
アメリカは、テロリストと交渉しない姿勢を明確にしている。WSJNYTQuartzなどアメリカのメディアは、日本国民の間で、安倍政権に欧米のようなアクティブな外交を期待する機運が高まっていると報じた。
その他、英国のメディアと同様、なぜISILとの交渉に長けたトルコに人質解放の仲介を願い出なかったのかと報じた。
大手メディアのIACが運営しているThe Daily Beastは、日本人の拘束情報をいち早くキャッチした日本の週刊誌「週刊ポスト」に対して、外務省が「先んじて報道することは人質2人の命に関わる」としてストップの指示を出したことを報じた。そして、「週刊ポスト」がその指示に従ったにもかかわらず、安倍総理は中東を訪問するなど、人質の保護に気を配らなかったと、糾弾した。
また、ISILが後藤さんら2人の日本人人質を拘束していることを知りつつ、当初の予定通り訪問を断行したことにより、日本政府はISILのブラックリスト入りし、人質2人が開放されるチャンスは実質ゼロとなったと報じた。
フランスは、日本人は世界における立ち位置を模索していると報道 
フランスは、英米との協調を乱している。同国のLe MondeLe Pointなど大手メディアは、日本の各国に対する中立的な政策は実に“日本らしい”と主張した。
また、Le Monde、Le Pointなどを深く読むと、今後安倍政権は中立路線から離れ、よりアクティブな外交をしたいと意気込んでいると述べた。
ちなみに、代表的な経済メディアLes Echosが安倍総理の憲法9条改正案について、改正ではなく” 再解釈する“と述べたことにも注目だ。
イタリアは、後藤さん殺害は安倍総理のエラーとリポート 
イタリアは、シリア難民問題に悩んでいる。イタリアの「Il Sore 24 Ore」は、後藤さんが殺害されてしまったのは、安倍総理が7つの間違いを犯したからだと報じた。
1つ目は、秘密裏に行われた11月以前の交渉が失敗に終わったこと。
2つ目は、その交渉の情報を得た「週刊ポスト」など日本のメディアに対し外務省が報じないように圧力をかけ、そして安倍総理はそれを看過したこと。
3つ目は、カイロでの演説において、中東地域に対し2億ドル支援すると表明したが、その目的を明確にしなかったため、ISILが同じ金額を身代金として要求する結果となったことなどだ。
残りは、ISILとの有効なコミュニケーション・チャネルを見いだせなかったこと、また、安倍総理がISILに対して「罪を償わせる」と欧米の政治家なような厳しい発言をしたことが、集団的自衛権など安倍総理のポリシーとあまりに重なったことなどだ。
ドイツは、安倍外交について報道なし 
ドイツは、ISILに参加する自国民が欧州一多い国だ。『Charlie Hebdo』銃撃に対するデモがドイツでも行われ、なおかつ、ISILに参加する自国民が多いドイツの大手メディアは、後藤健二氏がISILの手により殺害されたことについてのみ報道。安倍総理の対応については、特にカバーしなかった。
 
今さらながら、無知で無策だった安倍晋三首相を批判、非難したところで、もう日本は後戻りできないレベルに来てしまったことは否定できない。
 
そううなれば今後世界の中でどのような振る舞いが大切なのか、思想家・武道家の内田樹はこう解説している。 
  
<米の従属国・日本がイスラム圏から敵視されてこなかった理由>
 2015.01.28 16:00 NEWS POST SEVEN 
 イスラム共同体は北アフリカのモロッコから東南アジアのインドネシアまで、領域国家を超えて結ばれた人口16億人の巨大なグローバル共同体であり、宗教、言語、食文化、服装などにおいて高い同一性を持っている。これほど広い範囲に、これだけ多数の、同質性の高い信者を擁する宗教は他に存在しない。
 加えて、イスラム共同体の構成員の平均年齢は29歳と若い。欧米先進国も中国もこれから急激に少子高齢化の時代に突入する中で、イスラム圏の若さは異例である。ここが21世紀の政治経済文化活動のすべてについて重要な拠点となることは趨勢としてとどめがたい。
 アメリカ主導のグローバリズムとイスラムのグローバル共同体はいずれもクロスボーダーな集団であるが、支配的な理念が全く異なる。イスラム社会の基本理念は相互援助と喜捨である。それは何よりも「孤児、寡婦、異邦人」を歓待せねばならないという荒野の遊牧民の倫理から発している。
 アメリカ型グローバリズムには相互扶助も喜捨の精神もない。「勝者が総取りし、敗者は自己責任で飢える」ことがフェアネスだというルールを採用している。この二つのグローバル共同体が一つの原理のうちにまとまるということはありえない。かといって相手を滅ぼすこともできない。隣人として共生する他に手立てはない。
 日本はアメリカの従属国でありながら、幸い平和憲法のおかげで今日にいたるまでイスラム圏から敵視されていない。それは日本の宗教的寛容の伝統もかかわっているだろう。ムスリムもキリスト教徒も仏教徒も平和的に共生できる精神的な基盤が日本にはある。
 この「ゆるさ」は日本の外交的なアドバンテージと評価してよいと思う。この宗教的寛容に基づいて二つのグローバル共同体を架橋する「仲介者」となることこそ、日本が国際社会に対してなしうる最大の貢献だと私は思っている。
※SAPIO2015年2月号
 
暴力を受けた側が暴力で返せば最後は両者が傷つく。
 
戦争はその典型的な暴力行為なのだが、残念ながら戦争を推し進める一部の人間は安全な場所に居て、戦闘行為を行わせその被害者は手足となる軍人と彼らに殺される一般人たちである。
 
安倍晋三も戦争を推し進める一部の人間に属する。
 
日本はアメリカの従属国でありながら、幸い平和憲法のおかげで今日にいたるまでイスラム圏から敵視されていない」という事実を今一度よく噛みしめる必要がある。
 
しかし「安倍、習両日中首脳を国賓で招待、米大統領補佐官」となればより一層安倍晋三首相の米国追随ぶりが強まることは確かであろう、とオジサンは思う。

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2015年02月08日

米主導の有志連合は「憂死連合」となる

2人の人質見殺しという大失態の原因も「特定秘密法」によって闇に葬り、国民に対しては「テロには屈しない」と強気の姿勢を崩さない安倍政権に対して、共同通信の世論調査では日本人人質事件に対する安倍政権の対応を「評価する」は「ある程度評価する」を合わせると計60.8%もあったという。
 
それはテレビの情報番組やニュースでは露骨な政権批判が全く見られないので多くの国民は、17日間も自宅に帰れず首相公邸で寝泊まりした安倍晋三首相を「よくやった」と錯覚している人が多いということであろう。 
 
このような事態が発生した場合の首相公邸であり、さすがに晋三ボッチャンもおいそれと母親名義の私邸には戻れなかったということであった。 
 
しかし、今後の国際的な連携の在り方について57.9%が「非軍事分野に限定」と回答しており、国民はまだまだ冷静であることがわかる。
 
ところで「人質殺害から1週間たたず…安倍首相が“夜の豪遊”もう解禁」によると、後藤健二さんが殺害された事実を把握した2日後の2月3日夜の自民党の鳩山邦夫元総務相を中心とするグループ「きさらぎ会」が都内ホテルで開いた「新年会」に出席した安倍晋三首相は「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本触れさせない」という勇ましい挨拶をしたという。
 
この発言の主旨は、海外の過激グループが存在しているという地域には日本人を行かせないということである。
 
国内ならばイスラム国の過激集団も簡単には入国できないだろうからリスクは少ないが、危ない海外には出さないという短絡的な発想から出た言葉だったのかもしれない。
 
しかしその姑息な首相の考えを忖度したような事態が発生していた。  
 
<シリア渡航 強制阻止 男性に旅券返納させる>
 2015年2月8日05時00分 朝日新聞DIGITAL
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命令の理由を記した旅券返納命令書=7日午後11時21分、新潟市中央区(個人情報保護のためにモザイクをかけています)
 シリアへの渡航を計画していた新潟市の男性フリーカメラマンが外務省から旅券の返納を命じられ、男性が命令に応じて提出していたことがわかった。邦人の生命保護を理由にした返納命令は初めて。同省は過激派組織「イスラム国」による人質事件を受け、シリア全域に退避勧告を出しているが、「渡航制限」という踏み込んだ対応は論議も呼びそうだ。
 「現地での取材を自粛するのは、それ自体がテロに屈するということ」。外務省から旅券返納命令を受けたフリーカメラマンの杉本祐一さん(58)=新潟市中央区=はシリア入りの計画の理由をこう説明した。
 今回の渡航では、クルド人自治組織が「イスラム国」から奪還したシリア北部の街コバニや、自由シリア軍、トルコ国内の難民キャンプなどを取材する予定だった。「イスラム国」の支配地域には入るつもりはなかった。生きて帰れなければ伝えられない、との思いがあるためだという。
 突然の旅券返納に、「渡航や言論、報道・取材の自由が奪われている」と憤る。「足を踏み入れなければ、そこで暮らす人々の気持ちを理解できない。我々はみんな宇宙船地球号の一員。無知ではいけないはずだ」と危険地帯で取材を続ける意義を語る。
 (大野晴香)
 ■外務省・与党、制限論強まる
 外務省や与党内では、邦人保護の観点から危険地域への渡航を制限する必要性を訴える意見が強まっていた。「イスラム国」に殺害されたとみられるフリージャーナリストの後藤健二さんがシリアに渡航する前、外務省は9、10両月、電話と面談で計3回にわたり渡航中止を要請したが、受け入れられなかった経緯がある。このため、同省内では「あれだけ止めてだめなら、ほかの強い手立てが必要になる」(同省幹部)との声が出ていた。
 ただ、憲法22条は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定し、海外渡航の自由を認める根拠となっている。菅義偉官房長官は「憲法との兼ね合いがある」と規制に慎重な姿勢を示していた。
 一方で、外務省幹部は「憲法上の問題があると言って裁判に訴える人がいるかもしれないが、国民も今回の人質事件を見ていたので、理解が得られるのではないか」と話す。
 ■取材締め付け/返納、仕方ない
 フリージャーナリストの安田純平さん(40)は「政府が取材をしてはいけない場所を自由に決められることになってしまう。極めて問題だ」と批判する。「政府が善しあしを判断して取材を制限していい問題ではない」と話した。中東取材の経験がある写真家の八尋伸さん(35)も「何の目的でどこに行く人の旅券を没収するのか、基準があいまい。取材活動への締め付けを感じる」と指摘した。
 一方、公共政策調査会の板橋功・第1研究室長は「シリアにいま日本人が渡れば、『イスラム国』に拘束される可能性が高い。『渡航の自由』があるとはいえ、多くの人を巻き込み、自分だけでは責任を負いきれない。邦人保護のためには返納命令は仕方ない措置だ」と理解を示した。
 
杉本さんによると、7日午後7時半ごろ、同省職員と新潟県警の警察官ら計数人が訪れ、旅券返納を求め、この際のやりとりの中で、職員らは「返納に応じなければ逮捕する」との趣旨の発言をしたという。
 
さらに杉本さんは同日深夜、共同通信の取材にも応じ、「取材と報道の自由どころか、言論の自由を妨げる行為。言語道断だ」と政府の対応を批判した。
 
杉本さんは、過激派組織「イスラム国」の日本人人質事件を受け、3日に新潟日報社の取材にシリア入りの計画を語っていた。 

「現地に滞在しなければ見えないものがある。ジャーナリストやカメラマンは現地に行く必要がある」とし、27日に日本を出発してトルコ経由で現地に入り、1週間から10日ほど滞在し、難民キャンプなどを取材する予定だった。
 
既に容疑者は逮捕されたが数日前に発生した小学校5年生の男児刺殺事件。
 
事件直後は当然ながら児童を持つ親は、独りで危険な場所に行ってはいけないと引き留める。
 
しかし、フリージャーナリストやフリーカメラマンたちは、政府の発表記事を垂れ流すような記者クラブの連中が行けないような危険な地域に行って貴重な写真や現地レポを公表して生計を立てている人たちである。
 
これを阻止するということはもちろん憲法上の問題も大きいが、個人の生きる自由を奪う行為である。
 
外務省の今回の措置は「邦人保護の観点」ということではなく、単に事件が起きてから非難されることを回避する自己保身であろう。
 
安倍晋三首相は「政権を批判することはイスラム国に忖度することになる」と言っていたが、今回のパスポートを取り上げて海外渡航を阻止する行為はまさに「現地での取材を自粛するのは、それ自体がテロに屈するということ」になる。
  
人質交渉の未熟さを曝け出してしまった安倍政権であったが、ビデオジャーナリストの神保哲夫は、オーストリアのウーロンゴン大学の教授で国際テロの専門家として知られるアダム・ドルニック教授が、2015年1月13日付けの国際政治誌「フォーリン・アフェアーズ」のオンライン版に、「身代金に関する4つの誤謬」と題する論文を自ブログで紹介していた。
 
<人質の命を救うことを最優先しなければならない
   身代金に関する4つの誤謬 ー アダム・ドルニック教授>
 February 7, 2015 
 オーストリアのウーロンゴン大学の教授で国際テロの専門家として知られるアダム・ドルニック教授が、2015年1月13日付けの国際政治誌「フォーリン・アフェアーズ」のオンライン版に、「身代金に関する4つの誤謬」と題する論文を寄稿している。テロリストによる人質問題と身代金に関する一考察として注目に値すると思われるので、ここで簡単に紹介したい。
 
人質解放交渉などに関わった経験を持つドルニック教授は、「政府は身代金を支払ってでも自国民の人質を助け出さなければならない」と主張する。そして、人質事件における身代金の位置づけや「テロには屈しない(no concessions)」政策の持つ意味については、大きな誤解があるとして、その中でも代表的な4つの誤謬を紹介している。
まず最初の誤謬として「テロには屈しない」(no concessions)(=身代金は払わない)を掲げる政府が、一切の交渉をしていないと考えるのは大きな間違いであると、教授は指摘する。欧米の先進国はほぼ例外なく、政府が正式に身代金を支払うことはしていないが、デンマークやオランダの例に見られるように、政府は人質の家族や仲介者などを通じて、身代金の支払いには柔軟に応じている場合が決して少なくない。アメリカは世界でもかなり例外的にテロリストとの交渉を無条件で拒否する立場を強く打ち出している国だが、後に紹介するように、アメリカは人質を救出するための特殊部隊を擁していたり、実際の紛争当事者であるためにテロリスト側の人質や捕虜を抱えている場合が多く、捕虜交換には応じている。no concessions方針をもっとも厳密に打ち出しているアメリカでさえ、人質の救出を図ったり、人質・捕虜交換など一定の交渉の余地を与えているのだ。よって、「テロリストとは交渉もしない」方針を掲げた国の政府が、テロリストと一切の交渉をしていない考えるのは誤りであると、行為はドルニック教授は言う。
 
2番目の誤謬として教授は、身代金の支払いを拒絶することで、その国の国民がより安全になるという説にも、根拠がないと指摘する。特にアメリカは、身代金の支払いに応じれば、その国の国民はまた人質に取られる可能性が高まり、逆にそれを拒絶すれば、人質に取られにくくなると主張しているが、それを裏付けるようなテータは存在しないとドルニック教授は言う。教授は、テロリストが人質を取る場合、場当たり的な行動による場合がほとんどで、その場でテロリストが国籍によって人質を選り好みするような話は聞いたことがないという。また、人質を取ったテロリスト側の主な要求としては、人質や捕虜の交換がもっとも優先順位が高く、身代金は二の次の場合が多い。そのため、一度身代金を払った国の国民はその後より大きな危険に晒されるというのは根拠のない説であるとして、「テロリストとは一切の交渉しない」ことを正当化する側の論理を一蹴する。
 
3番目の誤謬として、身代金がテロリストをより強大化させてしまうという説にも、教授は疑問投げかける。確かに何億円もの身代金を支払えばそれがテロ組織の強化につながる可能性はあるが、身代金目的の誘拐の場合、人質が政府高官のような要職にある人物でない限り、テロリストは少額の身代金でも妥協する場合が多いと教授は言う。むしろ、人質を取ったテロリスト側の真の目的が身代金ではない場合は、最初に法外な金額をふっかけてくる場合が多く、身代金目的の場合、金額にはかなり妥協の余地があるという。
また、身代金を支払うことが、テロ組織を弱める場合もあると、教授は指摘する。それはテロリスト組織は多くの場合は、「帝国主義との戦い」といった理念的な正当性を掲げている場合が多く、それが多くの兵士をリクルートしたり、場合によっては自爆テロのような自己犠牲まで強いることを可能にする原動力となっている。ところが、その組織が、実はカネを目当てに人質を取っている銭ゲバ集団であることが明らかになれば、その組織が理念的・精神的な正当性を失うことになると考えられるからだ。実際、フィリピンのイスラム過激組織「アブサヤフ」は2000年以降に相次ぐ人質事件で多額の身代金を得たことで、国民の支持を失い、今や大義を掲げるテロリストなどではなく、単なる犯罪集団のような地位に成り下がっているとドルニック教授は言う。
 
そして4つめにして最後の誤謬として教授は、身代金は払わないでも、他にも人質を救う手段があると思われていることをあげる。身代金を支払う以外に、人質を助ける手段がないことを認識すべきだというのだ。1つ目の誤謬の中でも触れたが、アメリカは特殊部隊による救出作戦を遂行する能力があると思われているが、実際は人質が殺される最も大きな要因が救出作戦であることは、テロ専門家の間では常識となっている。救出作戦は数十回に1回成功すればいい方で、失敗した場合、人質のみならず、救出に乗り出した特殊部隊の隊員にまで犠牲が出る場合も少なくない。
以上のような4つの誤謬を示した上でドルニック教授は、「身代金を払ってでも政府は自国民を救うべきである」と主張する。上にあげたように、実際は身代金を出す以外に人質を救う手立ては存在しないに等しく、身代金を払ったとしても、その影響は一般に言われているほど大きくはないというのが、教授の主張の主たる根拠となっている。
特に紛争地帯で危険な任務に携わる援助団体やNGOのスタッフやジャーナリストや医療スタッフが人質になった場合、政府はあらゆる手段を講じてでも彼らを助けることが重要だと、教授は言う。なぜならば、政府が「テロには屈しない」といった単なる原則論で彼らを見殺しにした場合、彼らの多くは危険な場所に行きたくても行けなくなってしまう。それは紛争地帯で日々の生活にも苦しむ住民への食料や医療などの人道的援助が行き渡らなくなることを意味し、教授の言葉を借りれば、テロと戦う上で最も重要な要素と言っても過言ではない「hearts and mind」(軍事ではない心の外交)が止まってしまうことを意味するかである。
 
安倍晋三首相が就任以来行ってきた珍妙なネーミングの「地球儀を俯瞰する外交」は、外交というよりは、国内の経済界の首脳を引き連れて行ったトップセールス(たとえば原発や武器部品等)であり、もう一つはODAと称する発展途上国に対して行う税金のバラマキであった。
 
そのため行く先々の国では大いに歓迎され、それが己の力と錯覚し悦に入っていた。
 
したがって「井の中の蛙大海を知らず」の如く、本当のタフな外交経験は安倍晋三は全くない。
 
今回の人質救出ということは安倍政権にとって経験のない交渉となり成果を上げることができなかった。
 
安倍政権が掲げる「積極的平和主義」も過半数の国民が「非軍事分野に限定」することを望んでいる。
 
それにもかかわらず「いつから『有志連合』入り? まともに答えられない安倍政権」という体たらくでは、政府に見殺しにされた人たちにとっては「憂死連合」となってしまった、とオジサンは思う。

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2015年02月06日

大手メディアからネット業者にまで広がってきた「政権忖度」風潮

国の指導者は国民からの支持が低下すると、共通の敵を国外に求め国民に一致団結を呼びかける。
 
殺害された日本人2人の拘束事実を事前に知っていたと国会で認めざるを得なくなった安倍政権。
 
その事実を知りながら昨年の12月の総選挙に突入し、水面下での外務省の交渉を中断させてしまった安倍政権。
 
人質には決して身代金を渡さないという英米型交渉を貫き、日本人の命よりも有志国連合へ顔が向いている安倍政権。
  
エジプトでの演説内容もしっかりと自分で推敲したとして、テロリストには「忖度」しないという安倍政権。
 
そんな安倍政権を支持するかのような、「イスラム国」による日本人人質事件を非難する決議を衆院は5日昼の本会議で、全会一致で採択した。
  
「テロ行為はいかなる理由や目的によっても正当化されない」と批判することは決して間違っているわけではなく、「わが国と国民はテロリズムを断固として非難するとともに、決してテロを許さない姿勢を今後も堅持する」と強調することもいいだろう。
 
問題はこの後である。
 
「非道、卑劣極まりないテロ行為」と非難して、「中東・アフリカ諸国に対する人道支援を拡充し、テロの脅威に直面する国際社会との連携を強め、これに対する取り組みを一層強化するよう政府に要請する」と、あたかも中東地域への支援を今後拡充するという安倍晋三首相の方針に沿うような内容であった。
 
「非道、卑劣極まりないテロ行為」を既に数多く繰り返してきた「イスラム国」に対して挑発的な発言をあえて行い人質を見殺しにしたことに対する「安倍晋三非難決議」は出来なかったようである。
 
そして最も問題な箇所は「テロの脅威に直面する国際社会」という表現である。 
 
イラク戦争開戦前後に当時の川口順子外務大臣宛に2通の公電を送ったため、北島信一外務省大臣官房長から詰問を受け、竹内行夫外務事務次官署名入り「勧奨退職」を通告され、事実上のレバノン大使「解雇処分」を受けたと主張している天木直人はブログでこう批判していた。
 
・・・前略・・・
国際社会という言葉はごまかしだ。世界で200か国ほどある国のなかで、ここでいう「テロ」の脅威に直面している国はわずかだ。「国際社会」ではなく「テロと戦う有志連合」と書くべきだ。それさえも高々世界の4分の一程度だ。断じて国際社会ではない。
 そして戦争を行っている国に援助を行うことほど間違いはない。そもそも人道援助という言葉自体が嘘だ。真の人道援助にあんな巨額はいらない。戦争当事国にプロジェクト援助をしても破壊される。財政援助ならどこへ消えるかわからない。腐敗や戦費に使われる。だからこそ、日本の援助は紛争当事国に供与しないという大原則があった。いつからその原則が変更されたというのか。誰が勝手に変えたのか。
・・・後略・・・
 
国会議員が「イスラム国」という仮想敵国と戦うために政権批判を控え始めているが、ネット上の政治ブロガーは大手マスメディアが報道しない、いや報道できない「真実」を盛んに発信している。
 
このようなアクセス数が異常に大きいブログはJNSCとよばれる「自民党ネットサポーターズクラブ」のネトウヨ顔負けの会員たちによってチェックされ安倍晋三側近に知らされるという。
 
そのような風潮が蔓延り、ブログ管理者が政権の意向を忖度して特定の記事を削除するという事件が起きていた。
 
当初は「エキサイトによる記事削除(公開停止) - 言論統制に出た安倍晋三」とブログ主は息巻いていたが、どうやらその後の調べで直接圧力があったわけではなく自主規制であったことが判明している。
 
ちなみに削除された記事は「湯川遥菜と後藤健二の命の尊厳の格差 - 差別に抵抗を感じない世論」と「後藤健二の神話化と神格化の洪水となった日本のマスコミと世論」いうものだったらしい。
 
しかしこのような騒ぎが起きることでネット上での自粛が広まれば政権側の思うツボとなる。     
 
もっとも就任当時から政権のツボに嵌って悪びれない日本の「公共放送」のトップは今でも「嵌り具合」は健在である。 
 
NHKの籾井勝人会長は昨日、定例の記者会見で、戦後70年の節目に従軍慰安婦について番組で取り上げる可能性はあるかと問われ、「正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えない。慎重に考えなければならない」などと訳の分からぬことを口走っていた。
 
安倍政権は「戦後70年談話」を検討中だが、籾井会長は「夏にかけてどういう政府のきちんとした方針が分かるのか、この辺がポイント」と発言していた。
 
<NHK会長「挑発的な質問やめて」 会見主なやりとり>
 2015年2月5日21時16分 朝日新聞DIGITAL
・・・前略・・・  
 【戦後70年の番組について】
 ――今年は戦後70年の節目。夏に特集番組や戦争に関するものをやると思うが、基本方針は
 籾井勝人NHK会長 現場で検討してもらっている最中。そういう意味で私が基本方針がどういったものか承知しているわけではございません。戦後70年、前回は60年だったんですが、だんだん戦後が遠くなっている中で、戦争というものの悲惨さと同時に、やはり我々が戦争の廃墟(はいきょ)からどうやって立ち上がってきたのかという、こういう元気が出る番組も入れていただきたいと個人的には思っております。ただ全体としての方針は、まだ聞いておりません。
 ――去年、朝日新聞の誤報問題で従軍慰安婦が脚光を浴びたが、従軍慰安婦問題を戦後70年の節目で取り上げる可能性は
 籾井 なかなか難しい質問ですが、やはり従軍慰安婦の問題というのは正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えませんよね。そういう意味において、やはり今これを取り上げてですね、我々が放送するということが本当に妥当かどうかということは本当に慎重に考えなければいけないと思っております。そういう意味で本当に夏にかけてどういう政府のきちっとした方針が分かるのか、この辺がポイントだろうと思います。
・・・中略・・・
 ――先ほどの従軍慰安婦問題で、正式に政府のスタンスがよく見えないとおっしゃった。現時点では河野談話があり、現政府も踏襲すると言っている。それでも政府のスタンスがよく見えないというのは、河野談話について変わるべきだとか変わりうるとか言うことでおっしゃってるんでしょうか
 籾井 その手の質問にはお答えを控えさせていただきます。
 ――「よく見えない」という認識は……
 籾井 あの、どんな質問もお答えできかねます。
――それはどうしてですか
 籾井 しゃべったら、書いて大騒動になるじゃないですか。
――大騒動になるようなお考えをお持ちなのですか
 籾井 ありません。そんな挑発的な質問はやめてくださいよ。
・・・後略・・・
 
全く主体性も自主性のかけらも感じさせない。

さすがに昨年1月の会長就任時に「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」などと発言した筋金入りの「政府寄り」会長の面目躍如といったところか。 
 
碓井広義・上智大教授(メディア論)はこう批判していた。
 
籾井会長は、就任会見での「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」という発言から何も変わっていない印象だ。そもそもジャーナリズムというのは、自分たちで課題やテーマを探して報じるもの。なかでも公共放送は国民の放送局で、国営放送ではない。権力者から見解を聞かされて、一定の方向に伝えるものではない。NHK内部に慰安婦問題に取り組みたい人がいても、企画書が書けなくなる。NHKのジャーナリズム機能を損なう発言だ。
 
あらためてNHKのジャーナリスムをNHKのホームページ「放送法と公共放送」から抜粋してみる。
 
NHKは、全国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行うことなどを目的として、放送法の規定により設立された法人です。
いわゆる特殊法人とされていますが、NHKの行っている「公共放送」という仕事は、政府の仕事を代行しているわけではありません。「国営放送」でも、「半官半民」でもありません。
放送法は、NHKがその使命を他者、特に政府からの干渉を受けることなく自主的に達成できるよう、基本事項を定めています。その大きな特徴は、NHKの仕事と仕組みについて、NHKの自主性がきわめて入念に保障されていることです。
NHKが自主性を保っていくためには、財政の自立を必要としますが、それを実現しているのが受信料制度です。
NHKの運営財源は、すべての視聴者のみなさまに公平に負担していただくように放送法で定められています。政府のほか、財界などいかなる団体の出資も受けていません。(政府から支出されているのは、政見放送の実費や国際放送の一部の実施経費のみです)
受信料制度によって財政面での自主性が保障されているからこそ、NHKは、視聴者のみなさまの要望に応えることを最大の指針として放送を行うことができます。

よくもまあ、こんな恥も外聞もない文章を堂々とネット上に公開できるものである。
 
「政府の仕事を代行しているわけではありません。『国営放送』でも、『半官半民』でもありません」と言いながら、「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」という籾井勝人会長の発言との齟齬を国民はどのように理解したらよいのだろう。 
 
事実と異なるのなら「詐欺罪」という刑法があるがなかなか適用は難しい。
 
しかし、不当景品類及び不当表示防止法というのが存在する。
 
20150206keihyogaiyo.jpg
   
この法律の4条1項1号「優良誤認」という条文にはこのように書かれている。
 
商品・サービスの内容が、事実と相違して、
1.実際よりも優良であると誤認させる
2.他社の商品・サービスよりも優良であると誤認させる
ことを規制する。
 
「政府の仕事を代行しているわけではありません」と言いながら、「自主性がきわめて入念に保障」されておらず絶えず政権の顔色を窺いながら安倍晋三の意向を忖度する態度は、受信料を支払っている顧客である国民を、「実際よりも優良であると誤認させる」という点からしても、明らかに「景表法」違反ではないだろうか、とオジサンは思う。
posted by 定年オジサン at 12:37| 神奈川 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 人質事件関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月05日

人質殺害事件の責任を放棄して、心は早くも改憲か

人質殺害事件に関しては、詳細はすべて「特定秘密にする」と本音を露わにした安倍晋三首相。
 
すでに官邸サイドは収束に向けて様々な画策を始めている。
 
以下の3点はこの10年余りで外務省が「朝日系列」の朝日テレビや週刊朝日に対して、その報道内容に抗議を行った結果の報道なのだが、最近の人質事件に関しても、テレビ朝日の「報道ステーション」に対して抗議したと外務省のHPに掲載されていた。
 
●2009年9月「インドネシア・コタパンジャンダム事業訴訟に関するテレビ朝日の報道について」
●2008年11月斎木アジア大洋州局長及び外務省幹部の発言と報じられた週刊朝日の記事について
●2006年10月TV朝日放映番組「ドスペ(小倉智昭の国民は怒っているぞ!3 年金が消えていた!真相スペシャル)」について(番組内容の事実誤認)
 
2月2日放送 テレビ朝日「報道ステーション」の報道(総理中東訪問関連)に関する申し入れ
【文書による申し入れ】
 貴社は,平成27年2月2日放送の「報道ステーション」において,シリアにおける邦人人質殺害事件につき報じる中で,総理の中東訪問に関し,「そもそも外務省関係者によれば,パリのテロ事件もあり,外務省は総理官邸に対し中東訪問自体を見直すよう進言していた」旨報じ,また,エジプトで行われた総理の政策スピーチに関し,「外務省幹部によると,この内容についても総理官邸が主導して作成されたという」と報じるなど,あたかも外務省の意に反して,中東訪問が行われ,スピーチの当該部分が作成されたかのような報道がありました。
 この報道内容は事実と全く異なるものです。
 総理の中東訪問については,同2日の参議院予算委員会で総理も述べられているとおり,様々な観点を総合的に判断して決めたものであり,貴社のように社会的に影響力の大きい報道機関が,このように事実に反する報道を行うことは,国民に無用の誤解を与えるのみならず,テロリストを利することにもつながりかねないものであり,極めて遺憾と言わざるを得ません。
 当該報道に関し強く抗議するとともに,本日の番組の中で速やかに訂正されるよう強く求めます。
 なお,同番組のその他の部分については,申し入れの対象としておりませんが,外務省としてそれらの内容について確認したものではありませんので,念のため申し添えます。
 
ジャーナリストの後藤健二さんが殺害されたと動画が公開された日には、すでに「交渉を妨害し後藤さんを見殺し! イスラム国事件で安倍政権が犯した3つの罪」という記事を載せていた本と雑誌のニュースサイト「リテラ」は、今度は安倍政権による人質見殺しの事実を突きつけ、上記の外務省によるテレビ朝日の「報道ステーション」への抗議も、官邸からの圧力だったらしいと報じている。
 
<後藤さん妻に口止めして選挙、外務省の反対抑え中東歴訪…安倍官邸の人質見殺しが明らかに>
 2015.02.04. リテラ
 イスラム国に拘束された後藤健二さんと湯川遥菜さんの映像がアップされて以降、本サイト・リテラは一貫して官邸が救出に動いていないこと、それどころか交渉の障害になっているという事実を指摘してきた。
 当初、外務省が水面下で動いていた際も、官邸は少額の身代金交渉さえ許さず、二人を放置したまま解散総選挙を強行。拉致情報が選挙に影響を与えないよう外務省の動きにストップをかけて、箝口令をしいた――。
 これらの記事に対しては、安倍晋三首相の親衛隊やネトサポらしき連中が「安倍さんを攻撃するためのデマ」「真偽不明のいい加減な情報」と攻撃してきていたが、本サイトが載せたのは外務省担当記者ならほとんどが把握しているような情報ばかりだ。大手マスコミが「人命優先」「テロに屈するな」という政府の圧力に怯えて報道を自粛していた事実を活字にしたにすぎない。
 実際、ここにきて、わずかながら本サイトの記事を裏付けるような報道もでてきている。
 たとえば、『報道ステーション』(テレ朝系)は2月2日の放映で、外務省は11月1日に、後藤さんがシリアで音信不通になったことを把握し、その翌日には外務省は後藤さんのガイドから聞き取りを行うなど、動いていたことを報じた。
 ところが、同番組によれば、昨年12月2日、後藤さんの妻のところにイスラム国から届いた身代金の要求があった少し後、外務省は後藤さんの妻に、政府としてメールを含めた直接交渉はしない、また身代金は支払わない、という趣旨を伝えていたという。
 いわば外務省は、ある時点から態度を急変させ、一切の交渉を放棄していたのだ。この変化の背景には選挙に走った官邸の意向があったことは想像に難くない。
 実際、イスラム国入りしたこともあるジャーナリスト・常岡浩介氏がイスラム国からのメールがあった12月2日、後藤さんの妻やシリア人の現地ガイドに対して外務省が口止めをしていたことを「女性自身」(光文社)2月17日号で明かしている
「この12月2日という日は、衆議院総選挙の告示日でした。12月14日が投票日ですから、その12日前という状況です。じつはこのとき、外務省が後藤さんの奥さんとシリア人の現地ガイドに、厳重に“口止め”をしていたのです」
「奥さんは子供を守るため、もともとメディアにさらされたくないとは思っておられましたが、外務省からの“口止め工作”について、現地ガイドがはっきりと証言しています。外務省は『後藤さんを守るためだ』と言ってきたそうですが、選挙前にこの話が出たら、安倍首相にプラスにはなりません。譲歩して助けても、助けられなくても批判されますから」
「後藤さんを守るため」というのが真っ赤な嘘だったことは、その後を見ても明らかだろう。常岡氏は「選挙前に拘束の事実が明らかになっていたら、日本政府はもっとまじめに助けていたかもしれませんね」とも語っていたが、そのとおりだ。本サイトが指摘してきたように、安倍官邸は選挙に影響を与えないよう事件そのものを隠蔽しただけなのだ。
 官邸の動きをめぐっては、本サイトが知らなかった事実も明らかになっている。これも同日の『報道ステーション』が報じたことだが、そもそも外務省関係者によると、パリのテロ事件もあり、外務省は総理官邸に対して、中東訪問事自体を見直すよう進言していた。それでも、総理官邸は行くと決断したという。
 また、『報ステ』は、問題になっている「支援はISILの脅威を食い止めるため」「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」というカイロスピーチの内容についても、「総理官邸が主導して作成した」という外務省幹部の証言を報じている。
 ようするに、一連の安倍首相の言動は外務省も止めるほどの、危険な挑発行動だったのだ。
 だが、こうした事実は『報ステ』以外のテレビ局では一切報道していない。それどころか、日本テレビやフジテレビでは、コメンテーターも含めて安倍政権の責任を問う声自体一切なし。たとえば、2月3日には参院予算委員会で共産党の小池晃副委員長が安倍首相の演説内容を追及したが、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)などはこの国会のやりとりさえ放映せず、そのかわりに自衛隊のテロ対策部隊の海外派遣のための体制づくりという安倍政権のPRのような映像を延々流し続けた。
 こうした背景には、もちろん安倍政権の圧力がある。安倍首相は国会で小池副委員長に対して「テロリストを批判してはいけないのか!」とムチャクチャな反論をしていたが、安倍首相とその周辺にいる政治家、官僚、専門家は自分たちの政権批判には必ずこの台詞を持ち出して恫喝をかける。
 いうまでもないが、テロリストに対峙し、テロを防ぐことと政権の対応を検証することはまったく別だ。ところが、安倍政権は「テロに屈しない」という錦の御旗を使って自分たちの批判を抑えにかかるのでる。
 実際、外務省幹部の証言による官邸の暴走を報じた『報ステ』には、さっそく外務省から「事実と全く異なる」との抗議があったという。外務省はこの間の官邸のやり方にかなり不満をもっており、『報ステ』には次官か審議官クラスが直接証言したのではないかといわれているが、官邸に「何をいってるんだ! 抗議をしろ!」とねじこまれ、態度を一転させて抗議をしたということらしい。
 おそらく、これに呼応してまたぞろ、ネトウヨやネトサポの『報ステ』攻撃が始まり、同番組はますます孤立することになるだろう。
 しかもここにきて、岸田文雄外相が、イスラム国人質事件が特定秘密保護法の対象になりうることを明言した。安倍政権はなんとしてでも、自分たちの犯罪をもみ消すつもりらしい。
(編集部)
 
恐ろしいことに、フジサンケイグループや讀賣グループの政府広報紙はともかく、一部のメディアを除いて、今回の人質殺害事件を機により一層翼賛メディア体制が強まってしまった。 
 
「どんな嘘でもつきつづけると本当になる」とよく言われるが、「テロに屈しない」ことを批判すると「テロリストの利益になる」と叫び続ければ、安倍政権がそのように言うのだから政権批判はやめようという空気が漂ってきてしまう。 
 
今回の事件にはいくつかの闇の部分が依然として残っている事実は指摘しておかなければならない。
 
田母神・湯川のツーショット」とか、「後藤氏がNHKの依頼で湯川氏救出にシリアに向かった」とか「JICA職員の後藤氏の奥さんがなぜいつも海外に向けて声明を出していたのか」、さらには「1日10万円と言われる後藤さんが加入した『誘拐保険』の保険料は誰が払ったのか」等々、政府の検証作業では決して明らかにはされない事項であろう。
 
昨夜のある会議で上記の噂の闇部分の話が出た時に、ある人が「今回の人質に対して昔のように『自己責任論』があまり聞かないのだがなぜだと思う」と切り出した。
 
「それは後藤健二氏がジャーナリストとして認められた仕事を残していたからではないか」とか「彼はかつてイラクへ遊び半分で出かけて誘拐・殺害された若者とは違うからだ」といった内容が大部分だったが、実は「読売や産経が『自己責任論』を控えてるということは政府が積極的に世論を抑えているからだ」という意見も出た。
 
なぜなら「自己責任ならば政府は身代金を払ってまでも救出する義務はないと突き放すこともできるが、そうすると自衛隊のテロ対策部隊の海外派遣のための体制づくりが進まないからだ」と言われ得心した。 
   
人質を見殺しにすることで「イスラム国」によるテロの残虐さを際立て、海外在留邦人に恐怖感を与えることにより、武装した自衛隊の恒久的な海外派兵を可能にすることができるという魂胆らしい。
 
そして常時自衛隊が海外の日本人救出と称して出動すれば、もはや憲法9条の外堀は完全に埋められてしまう。
 
そして仕上げとして行うのが憲法改正ということになる。 
 
<憲法改正、踏み込む首相 参院選へ、機運高める思惑>
 2015年2月5日05時00 朝日新聞DIGITAL
20150205kenpoukaiseischedule.jpg 安倍晋三首相が4日、憲法改正について、来夏の参院選後に国民投票を実施する目標を初めて示した。改正の是非を参院選の争点に掲げ、機運を盛り上げる狙いがありそうだ。改正を検討するテーマについてはまず政党間での議論に委ね、改正に慎重な公明党からも賛同を得られそうな点に絞り込む戦略を描く。
 3日の参院予算委。首相は、自衛隊の海外派遣をめぐる質疑で、憲法改正への意欲を示した。「今後、様々な事態にどう対応していくか。我が党はすでに9条改正案を示している。なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る、その任務を全うするためだ」
 翌4日、自民党の船田元・憲法改正推進本部長との会談では、改正発議の時期について、来夏の参院選後と踏み込んだ。具体的な時期を示し、早期の憲法改正を実現する機運を高める思惑からだ。
 首相は昨年末の衆院選時点では、憲法改正を前面に打ち出してはいなかった。討論会でも「残念ながら国民の中で、憲法を改正していこうという機運が盛り上がっている状況ではない」と述べるにとどめていた。
 しかし選挙の大勝で、自民、公明両党で、衆院で再び改憲発議に必要な定数3分の2超を確保すると、「政権公約で約束したことは、しっかりと実行していかなければならない」とトーンを上げ始めた。
 世論を見極めつつ改憲をめざすメッセージを発してきた首相と歩調を合わせ、自民党は連立を組む公明党のほか、民主や維新両党など改憲に理解を示す野党と連携し、改正に向けた準備を進めてきた。
 昨年の通常国会では、投票年齢を18歳以上とする改正国民投票法が、共産、社民を除く与野党の賛成で成立。改憲案が国会で発議されれば、国民投票が行える環境が整った。先月開会の今国会では、推進派の与野党の枠組みを使って、具体的な改正テーマについての議論も始まる見通しだ。
 ただ、1月に就任した民主党の岡田克也代表は「安倍政権である限り、憲法改正の議論はしない」と明言。与野党の枠組みによる改正テーマのすり合わせや議論には応じない姿勢を打ち出した。
 参院では現在、民主を除くと、改正推進勢力は、発議に必要な3分の2(162議席)をわずかに超える状況だ。このため首相側が任期中に国民投票を行うためには、来夏の参院選で改正の是非を掲げ、自公をはじめとする推進派で3分の2超の議席を確保することが前提条件となる。
 ■緊急事態・環境権、テーマ絞る
 首相は4日、会談した船田氏に対し「(改正を検討する)テーマについては何も言いません」と話し、具体的な改正点をめぐる議論は、政党間の協議に委ねる考えを伝えた。
 首相はこれまで、戦争放棄を定めた9条や改憲手続きを定めた96条の改正の必要性について訴えてきたが、公明党などの反発もあり、棚上げにした経緯がある。このため最近の言動からは、戦略を練り直して着実に改正への歩を進めようとする姿勢がうかがえる。
 昨年11月の朝日新聞のインタビューでは、首相は「(憲法改正案の発議に必要な衆参両院の)3分の2の多数派を形成できるものから行っていくアプローチが一番現実的」と語り、各党が一致するテーマから改正に着手する考えを示した。
 自民党は昨秋の衆院憲法審査会で、今後検討していく具体的な改正テーマとして、(1)大規模な災害や有事の際、個人の権利を制限することなどを定めた緊急事態条項(2)次世代への負担先送りを制限する財政規律条項(3)国や国民の環境保全への責任を定めた環境権――の3点を各党に提案した。緊急事態条項については、共産を除く7党から反対意見は出なかった。
 4日の会談後、船田氏は記者団に「我々も国民も(憲法改正に)慣れていない。1回目の憲法改正はきちんと手続きを行って実現することが非常に大事だ」と述べ、国民が賛成しやすいテーマに絞って改憲議論を進める方針を示した。
 しかし、公明党幹部は「まだ何を改正するかさえ決まっていない。相当詰めた議論が必要なのに、期限を先に言うのはなぜだ」と反発。政党間の協議がスムーズに行くかどうかは見通せない。(渡辺哲哉)
  
そもそも、
(1)大規模な災害や有事の際、個人の権利を制限することなどを定めた緊急事態条項
(2)次世代への負担先送りを制限する財政規律条項
(3)国や国民の環境保全への責任を定めた環境権
などは別に憲法に書き加えなくても十分に個別立法で対応が可能である。
 
「加憲」を唱えている公明党への配慮ということもあるのだろうが、「我々も国民も(憲法改正に)慣れていない。1回目の憲法改正はきちんと手続きを行って実現することが非常に大事だ」ということにより、憲法は自分たちで変えることができるのだ、と国民に浸透させることが狙いなのであろうが、現在の日本国憲法は、憲法の改正に通常の法律の改正の場合より困難な手続を要求している硬性憲法と呼ばれているからこそ、戦後70年日本は戦争に巻き込まれなかったことを、改めて広く知らしめなければならない、とオジサンは思う。  

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2015年02月04日

安倍晋三は人命尊重より「テロとの戦い」がお好き

珍しく暦通りの暖かな「立春」の日となった。
 
もっとも世の中には「立春」どころか、「アギーレ監督解任 報道4カ月、対応後手」のように日本を旅立って帰れなくなった人もいる。
  
沖縄県名護市の辺野古沖では今でも安倍政権による「非人道的」な行為が、同じ日本人によって繰り返されている。
 
以下の連続写真を見てほしい。
 
20150204_henoko01.jpg
(写真上から)カヌーが臨時制限区域内に入ると、海上保安庁の職員が飛び移り転覆させた。その後、カヌー隊のメンバーは、ゴムボートに引き上げられて拘束された=2月2日午後2時56分、名護市・大浦湾(伊藤桃子撮影)
 
20150204_henoko02.jpg
 
20150204_henoko03.jpg
 
20150204_henoko04.jpg
 
20150204_henoko05.jpg 
 
<カヌー転覆させ拘束、沖合に連行…反発強まる辺野古沖>
 2015年2月3日 14:25 沖縄タイムス
 【名護】新基地建設作業が進む名護市辺野古沖で2日、海上保安庁に沖合まで連れて行かれ、降ろされたカヌーの市民は「海の安全を守るための海保だろう」と唇を震わせた。この日は稲嶺進名護市長が過剰警備を控えるよう求めたが、海保の行動はエスカレートする一方だ。
 「降りろ」。海保職員が午後4時ごろ、沖合に連行したカヌー隊の8人に命令した。そのうちの1人、名護市の女性(47)は「ちょっと待って、ここは危険。降りない。なぜ降ろすの」と抵抗したが、職員は「上司からの指示」の一点張り。無理やりボートから降ろされた。
 抗議船でカヌー隊を迎えにいった男性(38)は「これまで解放場所は拘束現場か、岸の近くだった」と説明する。「日没も近い午後4時にあんな場所に放置するなんて、絶対にやってはいけないこと。いつか死者が出てしまう」と深刻な表情を浮かべた。
 マリンレジャー業の男性によると、「現場は外洋と変わらない。水深は深く、波は荒く、流れが速い」という。「海保が岸とは逆に沖に連れて行ったり、カヌーを転覆させたり。命を預かるプロとしてどうなのか」と疑問を投げ掛けた。
 
このような現場の映像が本土のメディアが報道すれば、安倍政権の余りにも酷い仕打ちぶりが国民に明らかにされるのだろうが、残念ながらそのようなメディアは在京大手マスメディには存在しない。
 
さて先月の2人の日本人人質事件が発覚して以来、「いまこそ安倍政権をキチンと批判すべき」で、
 
「自共対決時代になった」と自画自賛していた志位委員長自らが安倍政権に迎合するかのような言動にでていた。 
「自共対決」どころか、総選挙になると必ず自民党補完勢力と陰で揶揄されている実態を「自供」したようなものだった。
 
とか、「イスラム国は悪いが、政権批判はもっと悪いのか?」では、「『自共対決』とはしゃいでいた共産党の山下芳生書記局長も『悲劇を繰り返さないための検証というスタンスが大事だ』と全く対決の姿勢はない。」と共産党の姿勢を批判してきた。
 
ところが昨日の参議院予算委員会で質疑に立った共産党小池晃副委員長の「対決姿勢」を見て、前言を撤回しなければならない気持ちになった。
 

 
「イスラム国」対策としての2億ドルの支援表明を行ったことに関してこんな質疑応答があった。
  
◆共産党・小池晃副委員長
「こういう演説をやれば、2人の日本人に危険が及ぶかもしれないと、そういう認識は総理にあったのか、なかったのか」
●安倍晋三首相
「テロリストに過度な気配りをする必要は私は全くないんだろうとこのように思いますし、これは今後とも不動の姿勢であります」
◆共産党・小池晃副委員長
「私は過度な気配りをしろなどと言ってません」
●安倍晋三首相 
「小池さんのご質問は、まるでISIL(「イスラム国」)に対して批判をしてはならないような印象を我々は受けるわけでありまして、それはまさにテロリストに私は屈することになるんだろうと、こう思うわけであります」
 
残念がら安倍晋三首相は、人質の生命を助けることができなかったことには全くの反省も遺族に謝罪する気持ちがないことを曝け出した。
  
「テロに屈しない」「不動の姿勢」を取る限りは、海外在住の日本人が仮にテロ組織に誘拐されたとしても日本政府は本気で救出することはない、と宣言したに等しい安倍晋三首相の答弁である。
 
<“イスラム国”2邦人殺害 国会検証 首相「テロに屈せぬ」と異論封じ>
 2015年02月04日01時57分) 西日本新聞
20150204abehatugen.jpg 過激派「イスラム国」に邦人2人が殺害されたとみられる事件で、政府対応の検証が国会で本格化する。一つは、エジプト・カイロで「イスラム国と戦う周辺国への支援」を表明した安倍晋三首相の演説の是非。過激派を刺激し、人質の命を危険にさらしたのではないか−。首相は指摘に対して「テロリストに過度な気配りをする必要は全くない」と反論する。「テロに屈しない」というスローガンを前に、正当な指摘や批判がかき消される恐れはないか。
 3日の参院予算委員会。共産党の小池晃氏がカイロ演説を取り上げ、「テロに屈することと慎重に言葉を選ぶことは違う。スピーチが人質に危険を与える可能性をどう認識していたか」と問うと、首相は声を荒らげて反論した。
 「小池さんの質問は、まるでISIL(イスラム国)を批判してはならないような印象を受ける。まさに、テロリストに私が屈することになる」
 予算委は騒然となり、審議は一時中断。小池氏は「テロに屈しない。そのひと言で懸念や批判に耳を貸さなくていいのか」と食い下がったが、やりとりは深まらなかった。
 首相はカイロで「イスラム国と戦う周辺国に総額2億ドルの支援を約束する」と述べた。これをイスラム国側は勝手に解釈、1月20日に公開した映像で「日本は十字軍に進んで参加した。2億ドルを支払わなければ2人を殺害する」と予告した。
 論点は、政府が邦人2人が人質となっていることを把握しながら、中東の地で「イスラム国と戦う」と表現したことの是非だ。
 政府は「人命最優先」と「テロに屈しないこと」の両立を目指した。この姿勢がカイロ演説でも必要だったのではないか、と複数の識者も指摘している。
 これは「2人がカードとして使われる可能性を情勢判断して演説を組み立てたのか。国家として優れた情報能力を持っているのか」(外交ジャーナリストの手嶋龍一氏)という問題提起であり、単なる政府批判ではない。テロの脅威が迫る日本にとって、国家の危機管理能力をどう高めるかの課題でもある。
 だが、首相は3日の参院予算委で「どういうメッセージを出すべきか。しっかり議論して発出した」と述べるだけで、質問に正面から答えない。「テロリストの思いをいちいち忖度(そんたく)して気を配る、あるいはそれに屈することがあってはならない」と繰り返した。こうした答弁を続ける限り、議論はかみ合わない。
    ◇   ◇
 後藤健二さん(47)とみられる男性の殺害映像が公開された1日、首相が「テロリストたちにその罪を償わせる」と声明を出したことも、国際社会で波紋を呼んでいる。
 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)の見出しは「平和主義からの決別、安倍首相が殺人者たちへの復讐(ふくしゅう)(リベンジ)を誓う」。記事は「過激派の暴力に指導者が直面した際、報復の誓いは西欧では普通だろうが、対決を嫌う日本では異例だ」と紹介した。
 英BBC放送は「異例の力強い言葉」と報じ、米紙ワシントン・ポストは「日本の国家主義者は、今回の人質危機を軍事強化の口実に使おうとするだろう」とする識者の見方を伝えた。
 これらの記事は曲解しているが、首相の声明は確かに踏み込んだ表現だ。政府は英語とアラビア語でも声明を発表し、「償わせる」という部分は英語で「責任を取らせる」と記したが、タイムズ紙やBBCの記事は「代償を払わせる」と強い語調になっている。
20150204abehatugen02.jpg

 首相の真意は「犯人に法の裁きを受けさせる」ことであり、菅義偉官房長官は記者会見で国際刑事裁判所を例に挙げた。だが、世界に影響力を持つ英語メディアの報道は、過激派側に直接届く可能性が高い。
 カイロ演説で「戦う」と表明し、声明で「復讐」を誓ったとなれば、過激派がどう受け止めるか。テロに屈しないことと「挑発」は異なる。国会では冷静な検証が求められる。
 
安倍晋三首相は、先月の衆議院予算委員会で、第1次政権で掲げた「戦後レジームからの脱却」とのフレーズを用い「占領時代に大きな仕組みが作られた。自分たちの手でこの仕組みを作ったとは言えない」と強調し、日本国憲法制定など第二次世界大戦後の連合国軍総司令部(GHQ)の施策に否定的な考えを示した上で「21世紀にふさわしい新たな仕組みを自分たちの手で作るべきだ。私の信念だ」と明言していた。
 
「占領時代に大きな仕組み」といえば、第1次対戦後イギリスとフランスの「サイクス・ピコ協定」により主に植民地支配権と資源利権の分配を意図して中東地域が分割された。
 
サイクスとピコは、それぞれ青と赤のペンで自分たちの領域を分け、パレスチナを別の色にしたと言われている。
 
20150204sykes-picot-map.jpg 
  
その後の長い中東の歴史を経て、今の「イスラム国」は当時の列強国による分割を認めずに、まさに「戦後レジームからの脱却」を標榜しており、その点では安倍晋三もまた日本における「過激派」と呼ばれてもなんら不思議ではない、とオジサンは思う。

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2015年02月03日

イスラム国は悪いが、政権批判はもっと悪いのか?

自らのタイミングの悪い中東訪問の失策の追及を恐れた安倍晋三首相はさっそく、お得意の手を使ってきた。
 
後藤健二さん:世耕氏『外務省が計3回、渡航中止を要請』
 
実は「イスラム国」に殺害されたジャーナリストの後藤さんは、外務省の3回もの渡航中止も無視して、無謀にも危険な地域にいったのですから、当然なことで「自己責任」でしょう・・・とでも言いたかったのだろうが、露骨に政府側がそんなことをいうことは憚ったので「命を守れなかったのは政府の責任だ。自己責任論には立たない」と言い訳していたが、後の祭りというものである。 
 
昨日も「いまこそ安倍政権をキチンと批判すべき」の中で、「今日から再開される国会での審議で野党は安倍晋三首相に『これからも日本人を見殺しにするのですか?』と是非問いただしてもらいたいものである」とつぶやいた。
 
それでは昨日の参院予算委員会での野党議員はどのように政府に詰め寄ったのか。 
 
<空爆、後方支援否定 安保法制へ波及警戒 首相、慎重論を憂慮>
 毎日新聞 2015年02月03日 東京朝刊
・・・前略・・・
20150203kongonoterotaisaku.jpg 参院予算委では午前中からISに関する質疑が続いた。民主党の那谷屋正義氏が、ISを空爆する米軍などの有志国連合を支援すれば「テロの危険性が高まる」とただしたのに対し、安倍首相は「日本が空爆に参加することはもちろんあり得ないし、(補給、輸送などの)後方支援も考えていない」と断言。人道支援を拡充する考えを表明した。
 政府は集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案を今国会に提出する方針だ。首相が軍事的な関与を明確に否定したのは、ISに対する空爆作戦と国内での安保論議が結び付き、世論の慎重意見が高まるのを警戒しているためとみられる。
 昨年7月の閣議決定は「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」など新たな3要件を満たせば、武力の行使を認める見解を打ち出した。しかし自民党の高村正彦副総裁はISへの空爆作戦を3要件に該当しないと明言。空爆など直接的な武力の行使で多国籍軍に参加することは安保法制が整備されても不可能と考えられている。
・・・後略・・・
 
残念ながら、とても追及という姿勢は全く見られなかったが、それもそのはずで、民主党の枝野幸男幹事長は2日の記者会見で、「対決姿勢で臨むべき話ではない」と強調しており、「自共対決」とはしゃいでいた共産党の山下芳生書記局長も「悲劇を繰り返さないための検証というスタンスが大事だ」と全く対決の姿勢はない。
 
さらには「悪いのはISで、政府を不用意に攻めても国民の批判を受ける。まずは分析が必要だ」と国民世論を気にして及び腰の民主党幹部もいたほどである。
 
国会の質疑でなんで「日本人2人が殺害されなければならなかったのか」という素朴でかつ本質的な質問は一切出ず、むしろこれを奇禍として安倍晋三首相が安保法制にますます前のめりになり始めている。
 
<人質事件に便乗か 首相は早くも「安保法制」整備に前のめり>
 2015年2月3日 日刊ゲンダイ
 いつの間にか、テロと戦う“有志連合”に参加することになったことで、この先、日本の軍事大国化が一気に進められていくのは間違いない。
 安倍首相は「邦人救出」を前面に打ち出し、自衛隊の海外派兵、集団的自衛権……といった安保法制の整備を強引に進めていくつもりだ。はやくも、先週の衆院予算委員会で「自衛隊の持てる能力を生かし、対応できるようにすることは、国の責任だ」と、法整備の必要性を強調している。5月の連休明け、関連法案を次々に成立させていく算段だ。
 日本人が殺害されたいまこそ、安保法制を整備する絶好のチャンス、と計算しているのは明らか。人質事件をトコトン利用するつもりだ。しかし、こうした“惨事便乗”が許されるのか。安倍首相のやり方について、法大教授の山口二郎氏が東京新聞でこう語っている。
<とらわれた同胞を助けられないことに多くの良心的な人々が無力感を覚えている状況に付け込み、安倍首相は偽薬を売り込んでいるようなものである。この偽薬はたちが悪い。実際に使用すれば問題はさらに悪化するが、それは薬が足りないからと為政者は言いつのり、より大量の薬を投入させようとする。犠牲者が出れば出るほど、人々は強い薬を求める> 
 安倍首相のやり方を黙認していたら、テロとの戦いが拡大すればするほど、日本人が犠牲になればなるほど、日本の軍事大国化は進んでしまう。
「安倍首相は、湯川さんと後藤さんが人質になったと分かった時点で、安保法制の整備に利用しようと考えていたのではないか。素早い対応を見る限り、そうとしか思えません。しかし、自衛隊を海外に派遣できるようにすれば、日本人は狙われなくなるのか。逆でしょう。アメリカがテロのターゲットになっているのは、世界中に軍隊を派遣した結果です。中東に親日国が多いのは、戦後、日本は軍隊を派遣しなかったためなのに、安倍首相のやろうとしていることはアベコベです」(立正大教授・金子勝氏=憲法)
 大新聞テレビは、まったく伝えようとしないが、人質事件の裏側で何が起きていたのか、何が起きようとしているのか、国民は冷静に観察する必要がある。
 
トルコのアンカラ大客員研究員を務め、現代イスラム地域研究者でもある同志社大学の内藤正典教授は、今回の人質事件についてこう語っていた。
 
 私は「イスラム国」はヨルダン政府と交渉していなかったとみている。両者の要求はすれ違い、日本政府は身動きが取れなくなった。ヨルダンが巻き込まれなければ、死刑囚と後藤さんの交換という難しい交渉にはならなかったのではないか。
 安倍晋三首相がエジプトで表明した2億ドルの人道支援は攻撃的ではない。イスラエル国旗の前で演説したのはミスだ。後藤さんらが人質になっているのを掌握していたはずだが配慮が足りず、「イスラム国」側に揚げ足をと垂れた。外務省hじゃ中東情勢をよく知っている。官邸側のしきりに問題があったのではないか。
 首相は事件後、「罪を償わせる」と述べた。各国首脳も使う言葉だが、他国メディアが意訳する可能性がある。現にトルコでは「日本の首相、復讐を誓う」という見出しになるなど、挑発的に伝わる恐れがある。
 
少なくとも国内においては、警察官の数の増加に伴い犯罪率は下がっているようである。
  
しかし国境を越えたテロ行為は軍隊を動員しても簡単には無くならない。
 
「イスラム国」の最後の声明の中で安倍晋三首相に向けられた「勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断」というメッセージは決して的外れではない。
 
「テロとの戦い」と叫んだかつてのブッシュ米大統領以降、米国は14年間テロと戦って勝利を収めたことはない。
   
むしろ世界各国にテロが拡散させてしまった。
 
日本の自衛隊は実態はどうであれ、憲法上は軍隊ではない。
 
それでもさまざまな形で自衛隊は後方支援という形態でこの10年余り米国を支えてきた結果、ついに2人の日本人を見殺しにしてしまったわけである。
 
<やまぬテロの悲劇 自衛隊派遣 米支えた10年余>
 2015年2月3日 07時10分 東京新聞
20150203waragainsttero.jpg

 イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」を名乗るグループによる日本人人質事件を受け、安倍晋三首相は2日、国際社会と連携してテロとの戦いに貢献していく必要性を強調した。悲劇を繰り返さないためにも、米国などと連携を強めてテロに対抗するという理屈だ。一方、日本は10年以上、米国の「テロとの戦い」を支えるとの名目で、自衛隊の活動範囲を次々と拡大させてきた。 (高山晶一)
 首相は2日の参院予算委員会で「どの国もテロの脅威から逃れることができない」と指摘し「国際社会が連携して、過激主義の流れを止めないといけない」と強調。日本人人質事件を踏まえ、自衛隊による在外邦人救出を可能とする法整備に意欲を示した。
 2001年の米中枢同時テロの発生以降、日本は米国による「テロとの戦い」を後押しする自衛隊の海外派遣を繰り返してきた。
 米国が同時テロの報復としてアフガニスタンに侵攻すると、日本はテロ対策特別措置法を成立させ、インド洋上で給油活動を実施。03年に米国がイラクを攻撃した際には、イラク特措法を成立させ、陸上自衛隊が人道復興支援の名目でイラク南部に足を踏み入れ、航空自衛隊は物資輸送などを担った。
 日本人10人が犠牲になった13年のアルジェリア人質事件後、安倍政権は自衛隊による在外邦人の陸上輸送を可能にする改正自衛隊法を成立させた。首相が口にした邦人救出の法整備は、その延長線上にある。
 しかし、テロはなくなるどころか、むしろ拡散している。シリア内戦の泥沼化に乗じ、資金力や戦闘力を備えた「イスラム国」が台頭。米国や欧州諸国は「イスラム国」空爆に踏み切ったが、今年1月にフランスで風刺週刊紙テロが起きた。テロへの緊張感が高まる中で「イスラム国」を名乗るグループは日本人2人の殺害予告を発した。
 安倍政権は昨年7月、集団的自衛権の行使容認や、他国軍への戦闘支援の拡大方針を盛り込んだ新たな安保政策を閣議決定した。今国会では、決定内容を自衛隊の任務に具体化させる安保法制の関連法案を提出する方針。成立すれば、自衛隊の海外派遣の機会が増えることにつながる。
 自衛隊の海外派遣は、首相が掲げる「積極的平和主義」の根幹で、近隣の中韓両国などには警戒感がある。
 中東諸国は、専守防衛と平和外交に徹する日本に対し、欧米とは違う信頼感を抱いているといわれてきたが、最近は変化を感じているとの指摘も出ている。
 だが、首相は2日「テロのない社会をつくるため、積極的平和主義を進める」と明言した。
◆防衛駐在官の増員検討
 安倍晋三首相は2日の参院予算委員会で、日本人人質事件を受け「どれだけ時間がかかろうとも、国際社会と連携して犯人を追い詰め、法の裁きにかける」と述べ、テロ対策を強化する考えを示した。中東での情報収集能力を高めるため、ヨルダンをはじめとする日本大使館に派遣する防衛駐在官の増員を検討する考えも表明した。
 首相は自衛隊による在外邦人救出について「受け入れ国の了承がないと成立しない」と指摘。今回、救出活動を可能にする法律が整備されていたとしても「シリアの同意(を得るの)は難しいだろう」と述べた。
 安全保障法制に関しては「全体像を国会になるべく早く示したい」と表明。集団的自衛権行使が認められる状況については「どのような事態(で可能だ)ときれいに切り分けて整理することは、机上の論理でしかない」と明言を避けた。
 
「『積極的平和主義を推進』 集団的自衛権で首相答弁」という安倍晋三首相には、この人の言葉を送ろう。
 
20150203honnenocolum.jpg
「東京新聞」本音のコラム

人の死を冒涜するだけではなく、利用しようとする「品がない」安倍晋三首相に対してはこれからも批判の手は緩めてはいけない、とオジサンは思う。 
 
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2015年02月02日

いまこそ安倍政権をキチンと批判すべき

先月20日の「イスラム国」の日本人2人の人質ビデオ公開以降、連日にわたってさまざまな角度からつぶやいてきたが、通常国会が開会される前には「外務省の怠慢とやはり飛び出した自己責任論」の中で「安倍政権の中東外交大失策のために日本が巻き込まれるという事態を見据えて、来週から始まる通常国会では野党は厳しく安倍外交を追及しなくてはならない」とつぶやいた。
 
しかし、自民党から「イスラム国:事件対応専念へ、国会負担軽減を 野党に要請方針」と機先を制され、さらには共産党の池内沙織議員がツイッターで安倍政権批判をしたところ、「共産・池内氏のツイート『今あのような形で発信することは不適切だ』志位氏が批判」と、「自共対決時代になった」と自画自賛していた志位委員長自らが安倍政権に迎合するかのような言動にでていた。 
 
「自共対決」どころか、総選挙になると必ず自民党補完勢力と陰で揶揄されている実態を「自供」したようなものだった。
 
批判された池内議員の問題とされたツイッターは削除させられたが、その内容は至って健全なものであった。
 
20150202ikeutitwiter.jpg 
  
その後、同議員の公式ホームページの表紙はこんな風に変わってしまった。
 
kyosanto.jpg
 
これを見た共産党支持者どころかそうではない人もかなりの違和感を覚えたのではなかっただろうか。 
 
しかし、実際に湯川氏の殺害写真が公開されたころからか、以前の表紙に戻っていたので少々安心した。 
 
kyosantoold.jpg 
 
まあ、この程度ならば可愛いものなのだが、ツイッターのフォロワーが数千人を要するある人が「ツイッターで人質事件の原因は安倍晋三にある」と言ったらたちまちネトウヨ連中から、「人質事件を政治利用するな」と執拗に攻撃されたと言っていた。
  
1月17日は阪神淡路大震災20年目の節目には天皇・皇后も追悼式典に出席していたが、安倍晋三首相は外務省の忠告を押し切ってすでに中東入りしていた。

人道的に一番気を遣わなければならない自国の震災被災者を放置して、エジプトで「イスラム国」と戦っている国の人々に「人道的支援に2億ドル」とバラマキ演説という政治的なパフォーマンスを繰り広げていた。
 
まさに安倍晋三首相の政治的な行為が結果的には日本人2人の殺害につながったという指摘は決して「政治利用」なんかではない。
 
ところで、自分の軽率な言動が人質の殺害につながったとは決して思ってもいない安倍晋三首相は「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために、国際社会と連携していく」と訳の分からぬことを口走っていた。
 
「テリリストにその罪を償わす」とは一体どういうことなのか。
   
まさか実行犯を特定して仇討を遺族にさせるわけではあるまい、と思っていたらどうやら「『後藤さん殺害』 殺人容疑などで警視庁が捜査 千葉県警と」ということらしい。
 
日本の警察の捜査権が及ばない外国で日本人が殺害されたということで、殺害されたと思われる2人の居住地を管轄地域とする警視庁と千葉県警が60人態勢で合同捜査本部を設置し、殺人や人質強要処罰法違反などの容疑を視野に捜査を始めるということらしいのだが、現場は「イスラム国」支配地域で政府がすでに立ち入りを禁止している地域であり、余りにも滑稽な話である。
 
ある程度は最悪の結果を想定していた安倍政権だったのだろうが、余りにも「イスラム国」が予告通りに事を運んでしまい狼狽した安倍晋三の側近が警察庁に指示した結果であろうが、ほとんど国民向けのパフォーマンスである。 
 
今回の人質殺害という「事態は同時に、安倍晋三首相が進める『積極的平和主義』とそのための『集団的自衛権行使解禁』による対米軍事追従路線の拡大が招いた結果」であり、「『イスラム国』の“製造物責任”はアメリカにあるということ」を念頭に、「複雑怪奇な中東世界へその地理も歴史もろくに勉強せず、世界を東西冷戦時代と同じ構図でしか認識できない安倍首相がノコノコ出かけて行って、何の想像力も覚悟もないまま、有志連合の端くれに名を連ねたいばかりに『イスラム国』と敵対する国々への援助を約束しただけでなく、こともあろうにイスラエルにまで急接近し、イスラエル国旗の前で『テロには屈しない』とやってしまった」安倍晋三首相をキチンと批判することが国会の役目である。
 
<後藤さん殺害では終わらない! 米国と安倍政権が踏み込む泥沼の対イスラム国戦争>
 2015.02.01 リテラ
 とうとう後藤健二氏が殺害されたと見られる映像が公開された。言語道断の残忍な所業であり、イスラム国への非難の声を上げることは当然の事だ。しかし、本サイトで何度も指摘してきたように、事態は同時に、安倍晋三首相が進める「積極的平和主義」とそのための「集団的自衛権行使解禁」による対米軍事追従路線の拡大が招いた結果でもある。
「テロリストが悪い」のは当たり前で、その無法者からどうやって国と国民を守るかに腐心するのがリーダーの役目だが、世界を単純構造でしか把握できない安倍首相は真逆のことをやってしまった。
 しかも、安倍首相は「テロリストに罪をつぐなわせる」と話し、この事件を機にさらに強硬路線を進めようとしている。いったいその結果、何が起きるのか。そのことがよくわかるのが、現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏が書いた『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書)だ。
〈米軍の軍事行動は、さらなる暴力の“増殖”をもたらす〉(同書帯より)、〈米国の「対テロ戦争」はイスラム世界の「パンドラの箱」を開けてしまった感があるが、米国にはその蓋を閉じるための有効な方策がまったくない状態だ〉(同書「はじめに」より)。このことを理解せず、アメリカの尻尾に乗って、(今回の安倍ように)ノコノコ中東に出ていくことがいかに危険なことかを、我々日本人は知る必要がある。
 まず、最初に認識しておかなければならないのが「イスラム国」の“製造物責任”はアメリカにあるということだ。「イスラム国」の前身にあたるISISの創始者はヨルダン出身のアブ・ムサブ・ザルカウィという人物で、1989年当時、ソ連のアフガニスタン侵攻に抵抗するイスラム義勇兵としてオサマ・ビン・ラディン指揮下のゲリラ訓練所だった「アル・カイーダ」(アルカイダ)に入り、テロリスト人生をスタートさせた。アルカイダはいまでは世界的な反米テロ組織としてその名が知れ渡っているが、もとは米CIAがアメリカの対ソ戦略上の必要からパキスタンの諜報機関ISIを使ってつくらせたものだ。
 1980年代を通じてアメリカが武器、弾薬、資金、軍事訓練などの支援を受け続けたことで、アルカイダは9.11テロを起こすほどの“化け物”に育ってしまった。前出のザルカウィはアルカイダでの活動を通じてテロリストとしての経験を積み、先鋭化していった。いま問題とされるイスラム過激派組織の“生みの親”“育ての親”は、実はアメリカだったというわけだ。
 やがてザルカウィはイラク入りして、ISISの前身に当たる「イラクの聖戦アルカイダ」を結成する。このきっかけをつくったのもアメリカだった。2003年のイラク侵攻とサダム・フセイン殺害だ。当時の米ブッシュ政権は「サダム・フセインが大量破壊兵器を所持していて、それが明日にもアルカイダ系テロリスト(ザルカウィのこと)に渡ろうとしている」などと主張し、開戦に踏み切った。ところが、「大量破壊兵器を持っている」という情報も、「フセインがザルカウィとつながっている」という情報も完全な捏造だったことが、後に米上院情報特別委員会の調査によって明らかになる。とくに、後者はイスラエルの諜報機関モサドから米CIAにもたらされた“偽情報”だったことはよく覚えておいてほしい。
 いずれにせよ、開戦前のイラクにはアルカイダもしくはアルカイダの影響を受けた組織が活動していた事実はなかった。話はむしろ逆で、アメリカの軍事介入とサダム・フセイン体制の崩壊によって生じた権力の空白に、ザルカウィらテロリストが入り込んでしまったというのが真相なのだ。そして、その後の米軍による占領政策とポストフセインとして登場したアメリカの傀儡マリキ政権の腐敗が、さらなる過激派武装組織の増長を生んでしまう。
 アメリカはイラク占領後、脱フセイン政策を徹底的に推し進めた。サダム・フセインがイスラム教スンニ派だったことから、シーア派をひいきにして革命に近い状態をもたらした。フセイン時代の支配政党だったバアス党は米軍統治によってことごとく排除され、政府機関の職員や学校の教員など数十万人のスンニ派市民が解雇された。200あった国営企業も解体されて外国資本に売り飛ばされた。ここでも大量の失業と不満を生んだ。
 この傾向はアメリカの指名で誕生したシーア派・マリキ政権になってさらに拍車がかかる。バアス党の高官たちは裁判にかけられ、罪を自白されられ、処刑されたり、自宅軟禁に置かれたりした。バアス党出身者がいるというだけで部族全体が公職から追放され、失業や貧困に陥った。旧政権幹部を放逐したマリキ政権の行政能力は驚くほど低かった。その上、露骨なシーア派優遇を行ったため、スンニ派地域では失業率が高まり、とくに若者たちが強い不満を募らせた。治安維持にあたった軍や警察も主にシーア派によって構成されていたため、スンニ派住民を不当に扱い、恣意的な逮捕、拷問、投獄が行われた。
 こうしたなか、前出のザルカウィ率いる「イラクの聖戦アルカイダ」はフセイン政権時代の行政テクノクラートや軍の解体で職を失った人たちを吸収していった。フセイン時代の諜報機関「イラク共和国防衛隊」の将兵やフセインの民兵組織「フェダイーン」も加わった。ザルカウィらはシーア派を“異端”と考える傾向があり、シーア派に対するテロを拡大させた。スンニ派部族の一部がザルカウィの支持に回り、過激派武装組織はしだいに「国家」としての体裁を整えていった。これが「イスラム国」の始まりだ。確実に言えるのは、アメリカのイラク侵攻がなかったら「イスラム国」の誕生もなかったということだ。
〈「イスラム国」がイラク北部を席巻したとき、スンニ派住民の多くは、彼らはマリキ前政権の圧政からの“解放者”だと考えた。(中略)「イスラム国」とスンニ派住民たちには、イラク中央政府は“共通の敵”であった〉(前掲書より)
 06年にザルカウィが米軍の空爆で殺された後も組織は着実に「領土」を広げていった。殺害されたザルカウィの後を継いだのが、バグダッドの大学でイスラムの博士号をとったインテリ知識人のアブー・バクル・バグダディだ。11年のアラブの春を経て隣国シリアの内戦が泥沼化すると、バグダディはすかさず部下をシリアに派遣し、アサド政権に対する超過激テロに参戦した。やがて、アルカイダ系と袂を分かってISIS(イラクとシリアのイスラム国)と名乗り始めた。14年になると支配地域を急拡大させ、ついには「国家樹立」を宣言するまでになる。このきっかけは、またもやアメリカの大きな“判断ミス”だった。
 米オバマ政権は14年6月に「イスラム国」と戦う“穏健な武装勢力”を支援するため5億ドルの資金提供を決めた。“穏健な武装勢力”とは、具体的にはシリアの反政府勢力「自由シリア軍」のことだ。アメリカはこれまでもシリアのアサド政権打倒のため、反政府勢力に武器、弾薬、資金を与えて支援してきた。ところが、その豊富な資金と武器の一部がなんと「イスラム国」にも流れていたのだ。ルートはいろいろあって、武器の供与を受けていた組織が丸ごと「イスラム国」に吸収されてしまったり、戦利品として奪われたり、あるいはイラクのシーア派主体の政府軍から米国製武器がブラックマーケットに流れることもあったという。アメリカがアテにしていた「自由シリア軍」の兵士たちも腐敗していて、貰った兵器を「イスラム国」に売却して現金を手にする者も続出した。
 要は、内戦下のイラク、シリアはぐちゃぐちゃで、“穏健な武装勢力”といっても、いつどっちに寝返るかわからない連中ばかりなのだ。「イスラム国」の手先もいれば、アルカイダにつながるテロリストも紛れ込んでいる。そんなところへアメリカは大量の武器・弾薬を投入し、結果として「イスラム国」の軍事力強化に手を貸してしまったわけだ。
 実は、アメリカはこれと同じ過ちを何度も何度も繰り返していた。
 なぜ、こんなことが続くのか。米オバマ政権はもともとアフガニスタン、イラクへと米軍の海外展開を進めたブッシュ前政権を徹底批判し、「イラク戦争にけじめをつける」と宣言してホワイトハウス入りしたはずだ。就任から3年かけてようやくイラクからの撤兵にこぎつけ、アフガニスタンからの引き上げも数年中には完了する予定となった。これが計画通り実行されると当然、米政府の国防予算が削られ、軍産複合体の利権が毀損される。困ったことにアメリカには、これを全力をあげて阻止しようとする勢力が存在しているのである。
 米議会は15年度の軍事予算とし586億ドルを承認する予定だったが、これは14年度予算から200億ドル余りの減額になる。しかし「イスラム国」の台頭で国防費の増額が検討され、米軍需産業に再び“好況”が訪れつつあるという。米政府がシリア空爆を開始した3日後にはレイセオン社が47基の巡航ミサイル(2億5000億ドル相当)を受注した。ボーイング社が製造するアパッチヘリがバグダッド郊外に新たに配備されることになり、このヘリにはロッキード・マーティン社製のヘルファイア・ミサイルが搭載されているといった具合だ。こうして軍需産業の生産ラインが動き出せばブルーワーカーたちの新たな雇用も創出される。アメリカの経済はいまや戦争なしでは成り立たないようになっている。
 03年のアメリカのイラク侵攻で最大の利益をあげたのは、チェイニー元副大統領がCEO(経営最高責任者)を務めていたハリバートン社だったといわれている。同社はおよそ400億ドルの巨利をイラク戦争でむさぼったという。米軍需産業はいまや世界の武器市場の75%を占めていて、中東はその最大マーケットになっている。これこそがアメリカが外国での軍事介入をやめられない実は本当の理由なのだと、前掲書の著者、宮田氏は指摘している。
 安倍政権は、そんなアメリカの戦争に集団的自衛権を使って加担しようとしているのだ。
 もうひとつ、知っておかなければならないのがアメリカとイスラエルの特殊な関係だ。米上院は14年7月8日、イスラエルがガザ攻撃を始めた10日後に全会一致でイスラエル支持決議を成立させた。決議には「ハマスのイスラエル攻撃はいわれのないもの」であり、「アメリカはイスラエルとその国民を守り、イスラエル国家の生存を保障する」とあった。イスラエルのガザ攻撃は国際法を踏みにじる行為であり、イスラム諸国はいうまでもなく、ヨーロッパ各地で大規模な抗議デモが起きている。パレスチナ人2000人以上が犠牲となり、500人余りの子どもも殺された。そんな虐殺行為が満場一致で支持されたのだ。
 この“虐殺支持”の背景には、イスラエル・ロビー(圧力団体)の活動があった。アメリカの議員の多くはイスラエル・ロビーから多額の政治献金を受け取っている。イスラエル・ロビーはアメリカ社会のあらゆる分野の重要なポジションを押さえているため、彼らの活動を批判すると政治家としての地位を脅かされたり、選挙に当選することができなくなったりする。それがアメリカの中東政策を著しく偏ったものにしている、と前出の宮田氏は言う。
 イランの核開発を問題にするアメリカは、同じ中東に位置するイスラエルの核兵器についてはまったく問題にしていない。アラブ諸国に対してはNPT(核不拡散条約)に加盟することをしきりに促しているが、イスラエルにはそうした姿勢は微塵もみせない。パレスチナ人が何人殺されようと、おかまいなしだ。それどころか、全会一致で殺害行為を支持してしまう。「イスラム国」に参加する若者たちには、そんなアメリカの“不正義”に対する憤懣があるにちがいない、と宮田氏は分析する。イスラエル・ロビーの圧力を受けた米政府の“不公正”な中東政策が、結果として「イスラム国」やアルカイダなどの過激派組織の台頭をもたらし、彼らの主張や活動に正当性を与えてしまっているというのである。
 それだけではない。アメリカはイスラエルの意向を受け、イスラエルにとって不倶戴天の敵であるイランに執拗な圧力をかけ続けてきた。その延長でイランとつながりの深いシリアのアサド政権も敵視し、一時は空爆による軍事介入さえしそうになった。このときも、アサド政権が化学兵器を使っているという、これまた真偽不明の情報に踊らされた。
 アメリカにとってのジレンマは、アサド政権が弱体化すると「イスラム国」の勢力が拡大してしまうことだ。そこで、やむなく「イスラム国」と敵対しながら、アサド政権打倒も掲げる“穏健な武装勢力”である「自由シリア軍」を支援するという作戦をとらざるを得ない。だが、これは支離滅裂な話である。なぜなら、作戦がうまくいってシリア国内で「イスラム国」が弱体化すると、今度はアサド政権が息を吹き返すことになるからだ。しかし、打倒アサド政権のためにアメリカが「イスラム国」を支援するわけにはいかない。本来なら、イランと和解・協力して、対「イスラム国」作戦を進めるべきだが、イスラエルやアメリカ国内の右派、ネオコンの反対もあってそれもなかなか容易でない。
 こうした複雑怪奇な中東世界へその地理も歴史もろくに勉強せず、世界を東西冷戦時代と同じ構図でしか認識できない安倍首相がノコノコ出かけて行って、何の想像力も覚悟もないまま、有志連合の端くれに名を連ねたいばかりに「イスラム国」と敵対する国々への援助を約束しただけでなく、こともあろうにイスラエルにまで急接近し、イスラエル国旗の前で「テロには屈しない」とやってしまったわけである。
 しかも、安倍政権はイスラエルとの軍事協力まで約束してしまっている。14年5月にイスラエルのネタニヤフ首相が来日した際、「新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」という文書が交わされ、日本の国家安全保障局とイスラエルの国家安全保障会議、防衛当局同士の交流、企業や研究機関による共同の研究・開発が進められることになった。その中には兵器開発についての技術交流も含まれていた。こうして安倍政権は国民の知らないところで日本の伝統的な「アラブ寄り」という中東政策の基調を捨てて「イスラエル寄り」に転換し、あろうことか武器のやりとりを協力し合うところまで踏み込んでしまったのだ。
 安倍首相の言う「積極的平和主義」とは、要するに「対米軍事追従」なのだ。アメリカと同じようにイスラエルとも仲良くして、アメリカの敵とは一緒に戦う。それが日本と日本人にどういう影響を与えるかにつてはまるで想像力が働いていない。この状況で集団的自衛権行使が解禁されるとどうなるか。安倍政権はしきりに「東アジアにおける緊張の高まり」を口にするが、『日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門』(朝日新書)の伊勢崎賢治氏も、『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』(角川oneテーマ21)の古賀茂明氏も、現実的に考えて東アジアでの有事はまずあり得ないと分析している。では、何のための集団的自衛権かというと、それは中東での米軍の仕事の一部肩代わりをさせられるのが可能性としてはもっとも高いと口をそろえる。
 そうなると、日本はいよいよアメリカ・イスラエルの傀儡でイスラム世界の“敵”と位置付けられることになり、今回のような人質事件や過激派による国内テロはもちろん、あらゆる危険を覚悟しなければならなくなる。しかもそれは出口の見えない泥沼だ。アメリカのブッシュ政権が「対テロ戦争」を宣言して今年で14年目になるが、テロ組織はなくなるどころか数も規模も拡大し、アメリカ市民は日常的にテロに怯える生活を強いられている。
 安倍政権が続く限り、日本も同じ道をたどることになる。今回の人質事件は、その入口に過ぎないのだ。
(野尻民夫)
 
2国間の戦争は一般には戦力の差によって決着がつく。
 
従来の米国の海外での戦争はすべて軍事力で優る戦争であった。
 
それが、頭の悪いブッシュ2世の米国大統領が2001年の「9.11」以降仕掛けた「テロとの戦い」は、軍事力の優劣とは関係なしに14年間も続き、米国には勝利感がないばかりか、オバマ大統領になって撤退を余儀なくされている。
 
しかし米国は米軍需産業による雇用の創出のためには軍事介入を簡単には止められない。
 
頭の悪さではブッシュに引けを取らない安倍晋三首相はイスラエルとの軍事協力まで約束し、人的交流のほかに武器の共同開発という、日本の伝統的な「アラブ寄り」という中東政策の基調を捨てて「イスラエル寄り」に転換してしまった。
    
「積極的平和主義」とは、要するに「対米軍事追従」であるという、化けの皮がはがされたような結果が今回の人質殺害事件なのであろう。
 
今日から再開される国会での審議で野党は安倍晋三首相に「これからも日本人を見殺しにするのですか?」と是非問いただしてもらいたいものである、とオジサンは思う。 
posted by 定年オジサン at 11:59| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 人質事件関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月29日

人質事件、国内メディアの限界と真相

あえて政府の対応ぶりを強調するかのように、参議院本会議中に緊急退席をするほどの迫真の演技を行っていた菅義偉官房長官と岸田文雄外相。
 
人質解放交渉は完全に日本の手を離れ、ヨルダン政府に預けられた形になってしまった。
 
この時点で、もう日本政府を直接批判、非難する声は出にくくなった。  
 
政府広報紙メディアは論外なのでさておき、国内大手マスメディアの報道ぶりを見てみる。
 
<有志連合の分断警戒 米「割れている印象」懸念 対「イスラム国」>
 2015年1月29日05時00分 朝日新聞ディジタル
 米オバマ政権は、「イスラム国」が有志連合の分断を狙って揺さぶりをかけていると警戒し、改めて結束を呼びかけている。「イスラム国」は、日本に人質の身代金を要求したり、ヨルダンに死刑囚の釈放を求めたりして、国ごとに要求を変えているためだ。
 「いかなる人質事件も、連合の強固さをはかるリトマス試験紙にはならない。60カ国以上が加わっている連合は非常に強固で、日本も貢献している」。国防総省のカービー報道官は27日の会見で、こう強調した。
 「イスラム国」の身柄交換要求について「日本が決めることだ」と判断を尊重する考えを示しつつも、人質事件が有志連合の結束に影響すべきではないと訴えたものだ。オバマ大統領も24日、湯川遥菜さんが殺害されたとみられる画像の公開を受け、声明で「同盟国である日本と肩を寄せ合い、日本の貢献を称賛する。我々は『イスラム国』を打倒するため断固たる行動を取り続ける」と結束を訴えた。
 米国内では、独仏などがこれまでに身代金の支払いに応じたとされていることを巡って、「有志連合内も割れているという印象を与える」(CNNに出演した元CIAアナリスト)と懸念の声が出ている。
 米国単独ではなく、国際的な包囲網で「イスラム国」打倒を目指すオバマ政権は、引き続き日本やヨルダンが対「イスラム国」で役割を果たすことを期待しており、人質事件の影響は最小限に抑えたい考えだ。
 ただ、人質事件への対応の難しさは、オバマ政権も理解している。「イスラム国」は昨年、米国人の人質3人を殺害。この間に、米軍の特殊部隊による救出を図ったが失敗している。現在もシリアの子供たちを支援するため入国した米国人女性が拘束されたままで、「イスラム国」は身代金や米国に服役中のパキスタン人科学者との交換を要求しているとされる。オバマ政権は「可能なあらゆる努力をしている」(マクドノー大統領首席補佐官)としているが、拘束は1年半近くに及んでいる。
 (ワシントン=大島隆)
 
国の命令に従って出撃し捕虜になった兵士は人質交換には応じるが、民間人に関しては決して交換交渉に応ぜずジャーナリストらを見殺しにしてきた米国なので、米国の論理と同様な役割を「日本やヨルダンが対『イスラム国』で役割を果たすことを期待」するということは、ヨルダンの捕虜になっているパイロットの交換までは認めるが、日本人ジャーナリストの交換は認めないというメッセージであろう。
 
しかし日本政府から180億円という莫大な援助をしてもらっているヨルダン政府に対する「イスラム国」の戦略は相手の弱点を突く、巧妙さが際立っている。
 
<「イスラム国」人質(その1) 翻弄されるヨルダン>
 毎日新聞 2015年01月29日 東京朝刊
20150129hitojitisyasin.jpg ヨルダンがイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の巧妙な要求にギリギリの対応を迫られている。ISの要求に応じ、ヨルダンに収監されているテロリスト、サジダ・リシャウィ死刑囚を釈放してフリージャーナリストの後藤健二さん(47)が解放されても、ヨルダン人パイロットは解放されず、批判が政府に向かう恐れもある。死刑囚の釈放か否か、どちらの選択肢を取っても、ヨルダンが痛手を負うことは避けられない。【アンマン坂口裕彦、カイロ秋山信一】
 ◇決断には痛み不可避
 「日本人の解放ではなく、パイロットを返せ」。27日夜、首都アンマンの首相府前では、昨年12月に身柄を拘束されたパイロットの母や親族、支援者らが集まり、政府に解放を迫った。
 ヨルダン政府は27日のISの映像公表で苦しい立場に置かれている。映像では後藤さんを解放する見返りにヨルダンに収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を求めている。ヨルダンにとって重要なパイロットの解放には言及せず、「殺害されない」ということしか分からない。さらに映像は「24時間以内に応じないと2人を殺害する」と有無を言わさぬ形で「最後通告」。自国民の解放が確定的でない段階で、日本人解放を優先することに、国内から批判が高まるのは避けられない。
 「ヨルダンの弱みを突く卑劣な手法」と地元紙記者は話す。ヨルダンは中東にありながら非産油国で経済基盤が極めて弱い。2013年の国内総生産(GDP)は世界92位の336.8億ドルだ。
 ヨルダン政府にとってISの要求に応じる最大のメリットは、パイロットの命だ。「日本人を優先した」という国内からの批判は避けられないうえ、パイロットが確実に救出される保証はない。それでも、同胞を見殺しにすることは辛うじて避けることができる。ヨルダンにとって日本の政府開発援助(ODA)は米国、アラブ首長国連邦(UAE)に次いで3番目で、将来、日本からの支援額の増額も期待できる。
 一方で、デメリットも大きい。テロに屈したことになり、パイロットの解放に向けた交渉でISが、さらなる難題を突き付けてくる可能性もある。何より国境を接するシリアで暴れるISが、ヨルダンへのテロを激化させる恐れもある。米国はISの死刑囚釈放要求について「テロに譲歩しない」(サキ米国務省報道官)とヨルダン側に圧力をかけた。対ISの有志国連合を率いる米国との緊密だった関係がギクシャクする可能性もある。
 ◇イスラム国、狡猾な戦術
 「私には24時間しか残されていない。パイロットにはより短い時間しかない」。ISの本拠があるシリア時間で27日午後4時(日本時間午後11時)過ぎ、イスラム過激派が犯行声明の発表などに利用するインターネットサイトに後藤健二さん(47)の新たな映像が公開され、ISは「劇場型」の人質事件を締めくくるべく、日本とヨルダン両政府に最後通告を突きつけた。
 ISは今月20日に後藤さんと千葉市出身の湯川遥菜さん(42)を拘束している映像を公開。その後、要求や状況はめまぐるしく変わり、日本とヨルダン両政府は翻弄(ほんろう)されISに主導権を握られる形となった。
 最初の声明で「72時間以内の人質殺害」を予告し2億ドル(約235億円)という破格の身代金を求め、世界の耳目を集めた。24日の声明では、ヨルダンで収監されているISの前身組織メンバー、サジダ・リシャウィ死刑囚と後藤さんとの「人質交換」を要求。
 メディアや事件に関心を持つ人は、次々と展開していく事件の推移に引き込まれていった。存在感を誇示するというISの広報戦略は、事件の結末に関わらず、成功したと思われる。
 一方、ISは、実質的な成果を得るための駆け引きも見せた。身代金から死刑囚釈放に要求を変えた点について、過激派の動向に詳しいエジプト人評論家のサラハ・エルディン氏は「当初は日本だけが標的で(法外な身代金を要求したが)、アラブメディアの関心が薄かった」と指摘。安倍晋三首相がアブドラ国王らと電話協議したことで「ヨルダンが仲介役になったと思い、アラブ世界での宣伝効果を狙って要求を変えた」と分析する。
 また「無理難題を押しつけてから現実的な要求に変更することで、相手に『検討の余地がある』と思わせるアラブ流の交渉術」(過激派研究者)との見方も。
 相手陣営の分断を図るという狡猾(こうかつ)な戦術も徹底していた。20日の声明では日本政府に2億ドルの支払いを要求し、国民に政府へ圧力をかけるよう要求。「政府」対「国民」という構図を作ろうとした。リシャウィ死刑囚釈放の決定権を持つヨルダン政府に対し「パイロット殺害」を示唆して脅す傍ら、日本政府にはヨルダン側に最大限の政治的圧力をかけるよう要求し、二国間の分断も狙った。
 さらに、ISはパイロットの解放については一切言及しなかった。ヨルダンを揺さぶる「カード」として今後も利用する考えとみられ、したたかさを見せた。
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 ■ことば
 ◇ヨルダン
 西はイスラエル、北東はシリアとイラクに接する。人口約700万人で、イスラム教スンニ派が9割とされる。遊牧民ベドウィン系のアラブ人のほか、パレスチナ難民も多く抱える。王室は日本の皇室と関係が深く、元首のアブドラ国王は10回以上訪日歴がある親日家。産油国ではなく、衣料品などを輸出し、原油などを輸入している。紛争地に囲まれていることから、米国や周辺アラブ諸国と幅広く協調する「バランス外交」を取ってきた。「イスラム国」のテロが自国にまで及ぶことを懸念し、有志国連合による空爆にも加わった。
 
元軍事ジャーナリスト黒田小百合は、2人の人質ビデオが公開された20日前後から、日本のマスメディアが報道しない、できない内容を精力的にツイッターで流していた。
 
以下に最新情報から遡って彼女からのツイッターを紹介する。
(少々長いので、飽きたら止めてください) 
  




































中東を始めとする海外メディア記事に容易に接する機会がない国民にとっては、国内メディア、特にテレビメディアからの情報だけで判断することなく、たまには海外情報に接して事の真実を把握する必要がある。

それにしても最終的にどのような形で終わろうとも、安倍政権はあらゆる手段を使って今後の安保法制政策を有利に進めることだけは確かである、とオジサンは思う。

 
posted by 定年オジサン at 12:08| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 人質事件関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月27日

国益?のために真実を伝えないマスメディア

第189回通常国会が26日に開会した。
 
事前に発表されていた通り、安倍晋三首相による所信表明演説は先送りになった。
 
もっとも先週の20日に公開された「イスラム国」による公開ビデオでの警告以来、政府内部はそれどころではない状態なので、所信表明演説の先延ばしは賢明だったのかもしれないが、うがった見方をすれば、ひょっとして織り込み済みだったのではと、勘ぐってしまう。
 
今国会では、集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障関連法案をめぐり激しい論戦が予想され、その日程は以下のように想定されている。
 
20150127kokkaiyotei.jpg
 
それにしても「イスラム国」による邦人人質事件に関しては、微妙な交渉が続いているのであれば政府としては手の内を明かすことはできないので、メディアに対しての情報提供は自ずと制限されることは仕方がない。
 
ところが不思議なことに大手マスメディアを始めとして、各社の報道内容が横並びで、そして事の発端がエジプトでの安倍晋三首相の会見内容であったことは「イスラム国人質事件は首相の舌禍」とネット上で指摘しているブログや「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」という週刊誌もあったにもかかわらず、新聞各社や民放テレビでは一切報道されていない。
 
<イスラム国人質事件で新聞各社が“安倍批判”自粛!? 露骨な擁護記事も登場>
 2015.01.26 リテラ
 湯川遥菜氏が殺害されたと見られる動画が公開され、さらに難しい局面に入ったと思われるイスラム国事件。政府がきちんと救出にあたるよう国民もプレッシャーをかけ続ける必要があるが、しかし、ここで気になるのは、日本の大手メディアの姿勢だ。
 本サイトが再三指摘してきたように、こうした事態を招いた責任の一端は安倍晋三首相にある。すでに湯川氏は昨年8月に、後藤健二氏についても10月末に拘束されたことを政府は確認していた。後藤氏については外務省が昨年の段階で秘密交渉を働きかけたものの、失敗に終わり、そのまま放置してしまったことも本サイトの取材で判明している。これは本日26日発売の「週刊ポスト」(小学館)2月6日号も指摘しているように、明らかな事実だ。
 安倍首相はそんななか、中東歴訪で2億ドルの支援をぶちあげ、しかもわざわざ「支援はISILの脅威を食い止めるため」「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」と、軍事援助であるかのような発言をしたのである。
 政府や外務省がこの「2億ドル」を「人道支援やインフラ整備などの非軍事分野での支援」などと“言い換えた”のは、最初の予告動画公開の後。「2億ドル=人道支援」ということ自体は誤りではないが、だとしたら、安倍首相のカイロでの演説は明らかなスタンドプレーであり、致命的な失言といっていいだろう。
 だが、新聞もテレビもそのことをほとんど報道しない。それどころか、政府の言い分を垂れ流し、安倍首相を擁護し続けているのだ。たとえば、人質事件が発覚した翌日、新聞各紙の社説にはまるで判で押したように同じ文言が並んだ。
〈しかし、日本からの医療や食料の提供は、住んでいた街や国を追われる人たちが激増するなかで、不可欠の人道的な援助である。「イスラム国」に向けた攻撃ではなく、脅迫者たちの批判は筋違いだ。安倍首相は記者会見で「許し難いテロ行為に強い憤りを覚える」と述べ、中東地域の平和や安定を取り戻すための非軍事の支援を続けていく意思を強調した。毅然(きぜん)として向き合っていくべきだろう。〉(朝日新聞 21日付朝刊「社説」)
〈身勝手で筋違いな要求だ。安倍首相はエジプトでイスラム国対策の2億ドルの支援を表明したが、それは避難民向けの食料や医療など人道援助が中心だ。あくまで非軍事活動に徹している。菅官房長官が「テロに屈することなく、国際社会とテロとの戦いに貢献する我が国の立場に変わりない」と語ったのは当然だ。〉(読売新聞 21日付朝刊「社説」)
 〈安倍首相は確かに訪問先のカイロで演説し、「イスラム国」対策として近隣のイラクやレバノンなどに2億ドルの支援を表明した。だが、その内容は「イラク、シリアの難民・避難民支援」や「地道な人材開発、インフラ整備」など非軍事的な色彩が強く、「イスラム国」との戦闘に力点を置いた支援ではない。〉(毎日新聞 21日付朝刊「社説」)
〈見当違いも甚だしい。「イスラム国」の暴力から逃れるため、シリアやイラクでは多くの人々が住む家を追われた。難民を支える環境を整えることが急務だ。そのための人道支援である。〉
〈安倍首相は「テロに屈してはならない」と述べるとともに、「国際社会と連携し、地域の平和と安定に貢献する方針は揺るがない」と決意を示した。「イスラム国」と対峙する各国と綿密に連携し、2人の早期解放に全力をあげてほしい。〉(日経新聞 21日付朝刊「社説」)」
〈エルサレム市内で会見した安倍首相は(中略)2億ドルの拠出は避難民への人道支援であることを強調し、実施する考えを示した。菅義偉官房長官も「テロに屈することなく、国際社会とともにテロとの戦いに貢献していく」と述べた。この姿勢を支持する。〉
(産経新聞 21日付朝刊「主張」)
 読売や産経だけなく、朝日や毎日まで──。まるで、報道協定か?と見紛うばかりの画一的内容だが、取材してみると、やはりそこには自主規制があるようだ。全国紙の政治部記者が語る。
「報道協定や表立った圧力はないが、官邸も外務省も口を開けば『人命がかかっているから慎重に』といってきますからね。政権批判をしたら、『事件を政治利用した』『イスラム国を利する報道をした』などと叩かれるのは目に見えている。今の段階では、我々としても人命最優先ですから、政府見解をそのままトレースするしかない」
 しかし、「人命がかかっているから慎重に」というが、新聞やテレビが手控えているのは安倍政権批判であり、イスラム国に対しては「許しがたい」「言語道断」などと、論陣をはっているではないか。ようするに、マスコミが刺激しないよう配慮しているのは、イスラム国でなく、国内の空気なのだ。
 実際、新聞だけでなく、テレビも過剰としかいいようのない自粛体制をとっている。ニュース番組はもちろん、フジテレビはアニメ『暗殺教室』の放映を中止し、テレビ朝日の『ミュージックステーション』では、ロックバンド「凛として時雨」による楽曲「Who What Who What」の歌詞が、「血だらけの自由」を「幻の自由」に、「諸刃のナイフ」を「諸刃のフェイク」に改ざんされ、またKAT-TUNが演奏予定だった新曲「Dead or Alive」が別の曲に変更されるという対策がとられた。
 そして、安倍政権はこういったメディアの空気を利用して、「人命尊重」を大義名分に自分たちの批判をしないように圧力をかけているのだ。
 「官邸はとにかく、今、救出よりも自分たちへの批判をどう抑え込むかということに躍起になっています。菅義偉官房長官や今井尚哉首相秘書官らは後藤さん湯川さんの自己責任論を示唆する一方、御用メディアの読売や産経、NHKを使って、露骨な安倍擁護を吹き込んでいる」(前出・政治部記者)
 その成果か、読売と産経は、表立った批判も出てきていない段階で、機先を制するように、こんな社説を掲載した。
〈気になるのは、安倍首相の中東歴訪がテロリストを刺激し、今回の事件を招いたかのような、的外れの政権批判が野党の一部などから出ていることだ。首相の中東訪問は、各国との連携を深め、地域の平和と安定に貢献することが目的である。〉(読売新聞 23日付朝刊「社説」)
〈中東歴訪中だった安倍晋三首相は一部予定を変更して帰国した。イスラム過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件の陣頭指揮を国内で執るためだ。事件は首相の歴訪が招いたものとの批判があるとすれば、誤りだ。卑劣なテロによって評価が左右されることはない。〉(産経新聞 22日付朝刊「主張」)
 
 何度でも繰り返すが、安倍政権が守ろうとしているのは自分たちの権力だけであり、国民の生命など一顧だにしていない。だが、メディアがこんな有様では、安倍首相の責任追及どころか、「テロとの闘い」を訴えたブッシュ政権支持一色になって、それに異を唱える者がバッシングされた9.11後の米国のような状況になる可能性はきわめて高いといわざるをえない。
(田部祥太)
 
26日発売の「週刊ポスト」の記事の以前には、すでに「マスコミが正確に報道しない湯川遥菜との関係」を詳細な過去の、記事やブログを基に検証していたブログもあった。
 
このブログ主の見解には賛否入り混じっているのだが、全く無視するには惜しい内容なので全文掲載する。  
 
<後藤健二の疑惑 - マスコミが正確に報道しない湯川遥菜との関係>
 2015-01-21 23:30 世に倦む日日
 後藤健二についてマスコミが隠して報道しない事実がある。正確に言えば、後藤健二と湯川遙菜の関係についてだが、マスコミは重要な事実を説明せず、われわれを誤解に導いている。このことは、昨年の記事にも書いたので、Blogの読者は覚えておられるだろう。一般には、後藤健二と湯川遙菜の接点について、昨年の7月末、湯川遙菜がトルコ経由でシリアに二度目の潜入をし、反アサドの自由シリア軍に拘束され、アジトで尋問を受けていたとき、英語が堪能な後藤健二が湯川遙菜を救ってやったのが最初の接触だという理解になっている。後藤健二自らが昨年8月にテレビで証言したとき、湯川遙菜との関係について、詳しくは説明しなかったが、そのときが初対面であるかのような印象で語っていた。自由シリア軍のアジトで最初に偶然に出会ったと、われわれはそんな感じで二人の関係を認識している。マスコミの報道も、そうした演出と論調になっている。しかし、実際にはそうではない。本人のBlogで検証するかぎり、昨年の湯川遙菜の中東渡航には全て後藤健二が同行しているのである。証拠を挙げよう。昨年4月下旬、湯川遙菜はシリアに一回目の潜入をしている。無論、外務省から渡航禁止令が出ている状況でだ。湯川遙菜にとって紛争地入りの初体験だった。帰国後の報告に、「僕が入国して数日後、ジャーナリストの後藤健二さんが入国し、お会した」とある。このときが、Blogで確認できる湯川遙菜と後藤健二との最初の接触である。


この事実は、Blogの公開情報であるにもかかわらず、そして見落とされていた重大事実であるにもかかわらず、昨年8月の湯川遙菜事件のときは、誰も指摘することなく、不審視され掘り下げて調べられるということがなかった。今回、二人の殺害予告映像が出て、朝日などが、さも以前から既知の事項であったかのようにさらっと書いている。その次。4-5月のシリアに続き、6月下旬に湯川遙菜はイラクに渡航している。イスラム国がイラク北部に侵攻して勢力を拡大させ、米国が空爆で阻止をしようとしていた時期だ。日本に帰国後、現地のレポートを書いているが、6/29の記事を見て欲しい。イスラム国と戦うクルド人部隊と撮影した写真に、後藤健二が収まっているではないか。このとき、後藤健二は現地レポートを報ステの映像にしている。この事実について、マスコミがこれまで注目して取り上げたことは一度もない。つまり、昨年4月のシリアでも、昨年6月のイラクでも、昨年7月のシリアでも、湯川遙菜は常に後藤健二と一緒だったのだ。湯川遙菜は英語ができない。だから、現地で活動するためには事情をよく知る通訳が必要で、シリアでも、イラクでも、後藤健二が湯川遙菜のガイドとなって世話をしていたのだ。英語のできない湯川遙菜には、後藤健二のサポートなしに現地活動は不可能だった。7月の自由シリア軍でのエピソードは、二人の初対面ではないし、後藤健二のあの証言が真実かどうかは疑わしい。

昨夜(1/20)のテレビ報道を見ていると、後藤健二は、湯川遙菜が8月にシリアでイスラム国に拘束された件について、自身が責任を感じており、イスラム国に潜入して身柄を救出する準備を進め、10月下旬にそれを実行している。10月22日にトルコに向かい、23日にトルコのコーディネーターに電話をかけ、24日に国境の町で接触し、25日に国境を越えてイスラム国の首都であるラッカに向かっている。帰国予定は10月29日だった。29日に帰国ということは、28日にイスタンブールから飛行機に乗らなくてはいけない。テレビ報道でのトルコのコーディネーターの証言だと、27日になっても帰らなかった場合、家族を含めた5件の連絡先に電話を入れてくれと後藤健二に頼まれ、本人の携帯電話を直に渡されたと言っていた。ここから察知できることは、後藤健二による湯川遙菜救出の行動がきわめて短期の計画だったということだ。25日に国境を越えてシリアに潜入し、27日には再び国境を超えてトルコに戻っていなくてはいけない。2泊3日の行程。つまり、後藤健二は何も事前に情報のないままイスラム国(ラッカ)に入ったのではなくて、イスラム国側のコーディネーターの手引きに従い、イスラム国側との打ち合わせに従って、本人の主観からすれば、湯川遙菜の身柄を引き取りに行ったのだ。現地で時間をかけて捜索するのではなく、調整した約束どおりに素早く身柄を引き取って戻ってくる予定だったのだ。

ところが、後藤健二の方は計画に自信を持っていたのに、豈図らんやのどんでん返しがあり、裏切られてイスラム国に拘束されてしまった。これは、推測を働かせれば、後藤健二が最初から騙されて誘き出されたのであり、事前のイスラム国との交渉の中で、イスラム国側が後藤健二を騙していたことになる。どうしてこういう展開になったのか。その推理は措いておくとして、確認しなくてはいけないのは、後藤健二による湯川春菜の救出行動がきわめて短期計画であり、先方との何らかの調整が事前にあったことだ。後藤健二は、この湯川遙菜救出行動を本当に単独で発意して実行したのだろうか。動機なり背景としてあるのは、本当に個人的な責任感だけなのだろうか。私はそうは思わない。後藤健二による湯川遙菜の救出行動は、単独の冒険的なものではなく、日本政府が何らか背後についていて、政府関係者と入念に相談した上で、言わば日本政府のエージェントとして動いたものだと思われる。10月下旬と言えば、湯川遙菜が捕まって2ヶ月半の時点であり、人質の解放について条件が纏まってよい頃合いでもある。ここで私の仮説を述べれば、後藤健二は、その「秘密機関」における湯川遥菜の上司なのではないか。湯川遙菜はあのとおり素人である。プータローの湯川遙菜が、一体誰から資金を得て、何やら任務のようなものを受けて、インドレバノンやシリアやイラクに頻繁に渡航していたのか。それは未だ謎のままだ。

私は、これは安倍晋三とJ-NSAがJ-CIAの海外拠点を創設し、機関工作員を養成するプロジェクトの一端を示すものではないかと疑い、Blogでそう書いてきた。湯川遙菜は、その機関工作員の初代の見習生で、言わばテスト・パイロットだったのではないか。最も危険な地域に送りこみ、リスクがどの程度あるか、その瀬踏みをさせる使い捨ての派遣道具だったのではないかと、そのように想像を巡らせている。見習生を現地実習で教育するには上司たる教官が要る。その中東における上司教官が、インディペンデント・プレスのジャーナリストである後藤健二ではなかったのか。湯川遙菜の三度(レバノンを含めれば四度)の中東渡航が、趣味の個人旅行ではなく、組織から資金と任務を受けた工作活動(の教育実習)であったことは、ほぼ間違いないものだと断定できる。そのとき、三度の中東渡航に常に影のように付き添い、英語通訳としてサポートしている後藤健二について、われわれはそれを偶然と見ることはできない。現地で後藤健二とコンタクトするよう、予め組織から指示されているのであり、後藤健二に対しても(実習生の)湯川遙菜と現地でコンタクトするよう、誰かから依頼がされているのだ。後藤健二が熟練の戦場ジャーナリストで、確かな取材をしていた仕事師であることは事実だが、ジャーナリストで同時にCIAの要員という人間はいくらでもいる。学者でも記者でもいる。スノーデンも平素の身分はDell社の社員で、東京で日本法人に勤務していた。

重要な事実は、後藤健二が行方不明になり、家族が外務省にその届けを出した後、11月にイスラム国から身代金10億円を要求するメールが入っていたことだ。この件は、昨日(1/20)初めてマスコミによって明らかにされた。毎日の記事では、ある政府関係者によるリークだ。この事実が漏れることは、安倍晋三にとって相当に不都合だったのではないか。つまり、日本政府は、昨年の11月から延々と2か月間もイスラム国と人質解放交渉をしていたことになる。当然、10億円の身代金の値切りとか条件面の折衝もやっていたのだろう。また、そのやりとりの逐一を米国に報告し、対処の指図を受けていたに違いない。結局、いつまで経っても埒があかず、日本政府が決断をしないため、業を煮やしたイスラム国側が、安倍晋三の「イスラム国と戦っている諸国への2億ドル支援」の発言を口実に取り、もう裏交渉は終わりだと表の勝負に出たということだ。簡単に言えば、イスラム国側は、後藤健二と湯川遙菜については身代金は放棄しているのであり、この二人については政治目的に絞って使ってきた。処刑宣告動画の衝撃を発信し、世界を恐怖させ、自らの存在を示威する宣伝に使うことに決めたのであり、オレンジ色の服を着せられて処刑宣告された以上、その方針が変わる可能性はない。それでは、イスラム国は身代金を手に入れられなくてもいいのかという疑問がわくかもしれないが、ひょっとしたら、彼らは3人目、4人目の日本人の人質を確保している可能性がある。そして、水面下で日本政府と交渉している可能性がある。

残酷な処刑シーンが動画で流れたとき、英米のように、何人人質が殺されても頑として身代金を拒否し続けるか、仏西のように、「テロには屈しない」と口で言いながら裏で交渉に応じる方針に転換するか、イスラム国は、日本は後者だと判断したのだろう。私も同じ見方に立つ。3人目、4人目、5人目と処刑が続いたとき、日本国民は、英米のような強硬路線をよしとせず、安倍晋三に方針を変えろと言い出し、内閣支持率を下げる方向に世論が向かうだろう。誘拐テロの手口は、注意と警戒をしていても防止は容易ではないものだ。中東には多くの日本人が仕事で駐在している。また、イスラム国の取材は商売になるので、湯川遙菜のような、あるいは前の北大生のような無謀な潜入者が出てしまう。中東イスラムの人々が持つ日本人への親近感・信頼感は、そっくり裏返して、日本人の中東イスラムの人々への無警戒感・安心感と合わせ鏡である。日本人は、カネさえ持っていれば何とかなると思ってしまい、そこに隙が生まれてしまう。イスラム国が、新しい別の日本人人質を取ることは難しいことではない。
 
「1強多弱」国会では自民党の要請から政府批判を自粛する空気が漂っており、所属議員のツイターでの安倍政権批判に対しては、共産党までが「共産・池内氏のツイート『今あのような形で発信することは不適切だ』志位氏が批判」という始末である。
 
当然というべきなのか、一昨日の日曜日に共同通信が実施した世論調査の結果、日本人殺害脅迫事件に対する安倍政権の対応を何も知らない善良な国民の60.6%が「評価する」または「ある程度評価する」という結果になった。 
 
これもメディア操作の成果かもしれないが、このような状態が徐々に続くと、いわゆる「茹でガエル」状態の国民は、来るべき発議された自民党の憲法改正案にも過半数が賛成してしまうという悪夢が現実になってしまうのではないだろうか、とオジサンは思う。 

posted by 定年オジサン at 11:55| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 人質事件関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする